研究課題/領域番号 |
22H02096
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 奈良女子大学 |
研究代表者 |
藤井 浩 奈良女子大学, 自然科学系, 教授 (80228957)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 高原子価ジオキソ錯体 / ポルフィリン / プロトン化 / 反応性 / 電子状態 |
研究実績の概要 |
マンガン5価ジオキソポルフィリン錯体とルテニウム6価ジオキソポルフィリン錯体のプロトン化反応により、対応するマンガン5価オキソポルフィリン錯体とルテニウム6価オキソポルフィリン錯体の生成をストップドフロー法を用いて検討した。 マンガン5価ジオキソポルフィリン錯体とトリフルオロ酢酸との反応から生成する錯体がマンガン5価モノオキソ錯体であるかを検証するため、有機溶媒より反応性が低い水中で反応を行った。水溶性マンガンポルフィリン錯体を合成した。錯体濃度が低い条件では、先にストップドフロー法で検出された錯体と類似の吸収スペクトルを示す錯体が同定された。さらにこの錯体を分光法で同定するため高濃度条件(1mM)で実験を行ったが、分解が速いことがわかった。分解過程のEPR測定を行った結果、マンガン5価状態であることが示唆された。 ルテニウムジオキソポルフィリン錯体とトリフルオロ酢酸との反応を行った。-80℃で実験を行うと、700nm付近に吸収をもつポルフィリンラジカル種が生成していることが明らかとなった。さらにストップドフロー法でその生成過程を調べた結果、さらにその前駆体として別のポルフィリンラジカル種が生成していることがわかった。生成したラジカル種の電子構造をNMRやEPRを用いて検討した。ポルフィリン錯体の特定部位を水素(H)から重水素(D)に置換した錯体を合成して実験を行った結果、NMRシグナルの帰属に成功し、その電子構造を解明することができた。EPRシグナルの解析から、ルテニウム3価錯体が生成していることが示唆された。この結果は、プロトンとの反応によりルテニウムが6価から2電子還元を受けていることを示すものであり、オキソ配位子の反応が行ったことが推定された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マンガン5価ポルフィリンジオキソ錯体のプロトン化により非常に高い反応性をもった新たな錯体が生成することを種々の分光法により明らかにすることができ、この成果をACS Catalysisに掲載することができた。この錯体は、本研究て提案した原理に基づき活性化されていると考えることができた。その活性は、対応する鉄錯体より約10000万倍高い活性をもち、本原理の独創性と妥当性を検証でき、今後の研究の有効性を示すことができたから。
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今後の研究の推進方策 |
マンガン5価ジオキソ錯体は、本研究の妥当性を示すことができたので、最終年度にあたる来年度はルテニウム6価ジオキソ錯体とプロトンとの反応を行う。ルテニウム6価ジオキソ錯体とプロトンとの反応過程をストップドフロー法により研究して、新規活性反応中間体の生成を検討する。反応させる酸の量を変えながら反応速度の変化を測定し、反応する酸の当量を解明する。さらに、ポルフィリンラジカル錯体のルテニウムの酸化数をNMRやEPRなどの磁気共鳴法を用いて決定する。これにより、ポルフィリンラジカルがどの軌道を占有しているかを解明する。またポルフィリンラジカル錯体のEPR測定をヘリウム温度で測定する。EPRシグナルを観測した場合は、それらのg値からルテニウムの酸化数を推定する。 これまでの研究結果をもとに、メタン、エタン、プロパンなどのガス状アルカンに水酸化反応の開発を行う。本研究で研究したジオキソ錯体とガス状アルカンの反応にプロトンを加え、反応生成物や反応選択性を追跡する
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