研究課題/領域番号 |
22H02115
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 北見工業大学 |
研究代表者 |
齋藤 徹 北見工業大学, 工学部, 教授 (40186945)
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研究分担者 |
林 英男 地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター, 技術支援本部技術支援部計測分析技術グループ, 上席研究員 (10385536)
安田 啓司 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (80293645)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 気液界面 / 気泡 / 精密濾過 / 塩基触媒 / 微視的環境プローブ / 疎水性 / ウルトラファインバブル |
研究実績の概要 |
気液界面を分離場や反応場として利用する低環境負荷型水系反応分離科学の基礎と応用を開拓するために以下の検討を行った。 1.気泡増幅精密ろ過 ホモジナイザーを用いて発生させた気泡が親水性PTFEメンブレンフィルター(精密ろ過膜、孔径0.2μm)により阻止されることを見出し、気泡に吸着する色素を選択的に精密濾過により阻止する方法を考案した。動的表面張力測定により明らかになった色素の気液界面への吸着と阻止率との間に明確な相関関係が見られた。阻止率は溶液の攪拌による流れの影響を受けないことから、気泡を吸着材とする分離技術の連続化の手法となりうる。 2.気泡密度測定と気液界面の分光学的評価 マイクロバブルについては画像解析による粒径分布測定から気液界面積の推算した。気液界面積の増加につれて阻止率が増加することが明確になった。一方、ウルトラファインバブル(直径~0.1μm)についてはマルバーン社製粒子数測定装置を用いて個数と粒径分布を測定した。気液界面において蛍光スペクトルが大きく変化する微視的環境プローブを見出し、各純溶媒中における蛍光スペクトルとの比較に基づき気液界面の溶媒特性(疎水性)を評価した。 3.気泡促進水系反応 気液界面のpHに関しては、水の自己解離により生じる水酸化物イオンの気液界面への配向により塩基性となる説と分子動力学シミュレーションの結果より酸性となる説とが入り乱れ、論争が終息していない。気泡の存在下においてトリフェニルメタン系色素の水酸化脱色反応を追跡したところ、気泡による反応促進効果が見出され、気液界面が塩基性触媒としての機能を有することが示唆された。さらに、水中に長期間安定に存在できることが知られているウルトラファインバブルを上記の系に適用するために、その発生条件と応用可能性を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
気液界面を分離場や反応場として利用するために必要な溶媒特性(①酸性と塩基性、②親水性と疎水性)を評価した。気泡を用いる分離技術の連続化の方法として、膜分離技術との融合の可能性が見出された。これらの成果は本研究の基礎と応用の開拓を推進する鍵となるものであり、最終年度に当初の目標を達成する目途を立てることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今年度までに気泡が分離媒体として機能することを明らかにし、塩基性薬物クロロキンの分離精製に応用した。また、連続化の可能性を開拓するために膜分離技術との融合を検討した。さらに、気液界面の分離媒体(抽出溶媒)としての性質を気泡含有水溶液中の微視的環境プローブの蛍光スペクトルに基づき評価した。 最終年度は、気泡の気液界面の加水分解触媒作用を利用する色素や抗生物質の分解、分散性粘土のフローテーション分離による高濃度薬物の分離除去および実用化を検討する。 1.気泡促進水系反応 気泡が塩基性触媒としての機能を有する発見に基づき、長期間安定なウルトラファインバブルを用いるβ-ラクタム系抗生物質の分解・不活性化を試みる。分解に影響を及ぼし得る要因や共存物質の影響を調べ、医療排水処理への応用可能性を検討する。 2.分散性粘土フローテーションによる色素および薬物の除去 昨年度の検討において見出された層状粘土鉱物の層状構造を破壊した分散性粘土のフローテーション分離を利用する比較的高濃度の色素や薬物の迅速除去を試みる。色素含有排水処理への適用をはかる。 3.実用化の検討 界面活性剤を用いる起泡分離(泡沫分離、イオンフローテーション等)については多くの研究が報告されており、装置条件も明らかにされているが、本法については検討例がない。液の高さや面積、気泡導入量、対象成分の濃度や共存物質等、実用の際に想定される項目の分離への影響を系統的に調べ、本法を利用する装置設計の指針を得る。
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