研究課題/領域番号 |
22H02116
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
柴田 悦郎 東北大学, 多元物質科学研究所, 教授 (70312650)
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研究分担者 |
飯塚 淳 東北大学, 多元物質科学研究所, 准教授 (70451862)
安達 謙 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (10880057)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | スコロダイト / ヒ素 / 非鉄製錬 / 安定固定化 / 湿式処理 |
研究実績の概要 |
酸化鉄(III)を用いたスコロダイト合成法では、溶液や前駆体、スコロダイト結晶間においてFe(II)とFe(III)の電子交換(RedOx反応)が進行しており、そのため生成するスコロダイト結晶中のFe(III)はヘマタイト由来だけではなく、その一部は溶液中のFe(II)由来となると考えられる。研究代表者らはFe(II)の一部をトレーサーである安定同位体鉄(54Fe)に置き換えて合成実験を行うことにより、スコロダイト結晶を構成するFe(III)の由来を定量的に評価することに成功している。本年度は、さらに、溶液のFe(II)濃度や温度、pHを変えて安定同位体鉄を添加したスコロダイト合成実験を行った。その結果、スコロダイト結晶を構成するFe(III)の約90%以上(最適条件下)が溶液中のFe(II)由来であり、ゲル状前駆体が残存する場合は溶液Fe(II)由来の比率が低下することが推測された。また、溶液中Fe(II)濃度が低い場合、スコロダイト結晶の溶液Fe(II)由来の比率も低下するが、これは過小評価の可能もあるのでさらに検討が必要であること、さらには溶液pHはスコロダイト結晶中の溶液Fe(II)由来の比率に影響を及ぼさないことが確認された。また、本合成法における溶液と固体酸化鉄(III)表面間で進行する鉄の酸化還元(RedOx)反応に関して、電気化学的手法による解析も行なった。本年度は、湿式法によりPt基板上にヘマタイト薄膜を形成した電極を作製することが可能となり、電極の自然浸漬電位と分極挙動を調査することで、カソード反応として酸化鉄(III)薄膜電極の還元反応が進行すること、ならびにアノード反応として溶液中Fe(II)の酸化によりスコロダイト結晶が生成することを確認した。さらに、反応パラメータとして溶液温度の影響について調査し、温度が高いほど反応速度が向上することが電気化学的測定により明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
安定同位体鉄を添加したスコロダイト合成実験ならびに電気化学的測定により順調にスコロダイト生成機構の解明が進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は本年度に引き続き、安定同位体鉄(54Fe)を添加したスコロダイト合成実験を行う。合成の際の溶液条件(温度、pH、Fe(II)濃度など)が及ぼす影響を引き続き調査することにより、溶液とゲル状前駆体ならびにスコロダイト結晶間においてFe(II)とFe(III)間の酸化還元(RedOx)反応機構をさらに詳細を明確化する。また、電気化学的測定では、これまでは常圧下での酸化還元挙動について調査してきたが、来年度はさらに高温・高圧雰囲気においても調査を行う。電気化学手法により高温雰囲気でのスコロダイト生成挙動を詳細に解析することで、高温雰囲気下も含めた合成プロセスの効率化の方針を探る。さらに来年度は、マグネタイト焼結体を用いてマグネタイト表面でのスコロダイト生成に関して形態学的評価も進める。過去に研究代表者らはヘマタイト焼結体を反応溶液に浸漬させることで、焼結体表面でのゲル状前駆体の生成とスコロダイト結晶への変遷過程を詳細に調査しているが、来年度の研究ではヘマタイトではなくマグネタイトの焼結体を用いた実験を行うことで、酸化鉄(III)の種類が及ぼすスコロダイト生成への影響を調査する。
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