研究課題/領域番号 |
22H02126
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
竹内 大介 弘前大学, 理工学研究科, 教授 (90311662)
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研究分担者 |
上原 宏樹 群馬大学, 大学院理工学府, 教授 (70292620)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 光学活性高分子 / ポリオレフィン / 不斉選択重合 / 液晶性高分子 / 延伸 |
研究実績の概要 |
光学活性ポリオレフィンの合成法は極めて限られており、その特性はほとんど明らかにされていない。光学活性パラジウム錯体によるオレフィンの異性化重合を利用し、キラルオレフィンの不斉選択重合を達成し、光学活性ポリオレフィンの合成法を開発するのが本研究の目的である。得られた光学活性ポリオレフィンの特性をラセミ体ポリオレフィンと比較し、光学活性ならではの特徴を明らかにする。さらに、その特性を生かした分子鎖が高配向された高強度ポリオレフィン繊維や、機能性ポリオレフィン膜の創製へと展開をはかる。 これまでに光学活性パラジウム錯体の合成を行い、カンファ―キノンを用い得られたキラルなパラジウム錯体は、活性はやや低いもののキラルオレフィン類の重合に活性を示すことを明らかにしている。今年度は、動的キラルな状態にあるジイミンに対して、光学活性ビスオキサゾリンパラジウム錯体を作用させることで、光学活性なジイミンパラジウム錯体を合成できることを明らかにした。旋光度および円偏光二色性測定から、得られた錯体が光学活性であることが確かめられた。 得られた光学活性ジイミンパラジウム錯体を用いて3-シクロヘキシル-1-ブテンの重合を行ったところ、イソタクチックなポリマーが得られた。DSCより、得られたポリマーは液晶性を示すことが明らかとなり、速度論的光学分割を伴った異性化重合が起こっており、得られたポリマーが光学活性である可能性が分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
光学活性ジイミンパラジウム錯体の合成例は限られているが、本研究において、光学活性なビスオキサゾリン錯体とジイミン配位子の配位子交換を利用することで、光学活性ジイミンパラジウム錯体の合成を達成した。また、実際に光学活性パラジウム錯体を用いてラセミ体オレフィンモノマーの重合を行うことで、液晶性を示すポリオレフィンを得ることに成功しており、不斉選択重合が進行していることが示唆されている。 一方で、光学活性パラジウム錯体の光学純度については明らかではなく、不斉選択重合の選択性の評価はできていない。また、重合の立体選択性について、向上させる必要があると考えている。 得られたポリオレフィンが液晶性を示すことも明らかにすることができ、ラセミ体のポリマーが液晶性を示さないことから、得られたポリオレフィンが光学活性であり、液晶性が光学活性ポリオレフィンに特徴的な性質であることも明らかになりつつある。ポリオレフィン繊維・ポリオレフィン膜の創製に向けて、ポリオレフィンの大量合成を計画している。 以上の点から、研究は概ね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
様々なジイミン配位子と光学活性ビスオキサゾリンパラジウム錯体との配位子交換により、対応する光学活性ジイミンパラジウム錯体を合成する。錯体に対して光学活性なエステルやエーテルを配位させ、それにより錯体の光学純度を評価する。また、光学活性なバックボーンをもつ光学活性ジイミンパラジウム錯体の合成についても検討を行い、より光学純度の高いジイミンパラジウム錯体を合成する。 得られた錯体を用いて、3-シクロヘキシル-1-ブテンの重合を検討する。反応率が50%程度の段階で停止し、未反応モノマーの光学純度を確かめることにより、不斉選択性を評価する。 グラムスケールでの重合について検討を行い、延伸による高性能化を試みる。
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