研究課題
人体と親和性の高いソフトロボットが盛んに研究される中,基材となる力学機能高分子の開発に注目が集まっている。機能向上の鍵となる材料の主要な創製プロセスは,(1)高分子の合成,(2)分子配向制御,(3)形状制御(フィルム化や成形加工)であるが,いずれも高度な技術を要することから独自の分野として研究が進んでおり,相乗的な機能設計には至っていない。本研究では,応募者が最近見出した,空間選択的な光重合過程で分子が配向する現象を詳細に調べ解明することで,(1)高分子合成・(2)分子配向・(3)フィルム化を一気通貫に行い,従来手法ではなし得ない高機能マイクロアクチュエータを創製する。本年度は以下の2点について検討を行った。(1) モノマーの光重合挙動解析:これまでの検討により,スリット光重合が分子拡散の誘起を示唆する結果を得ているが,分子論的な議論は未着手であった。そこで本年度は,モノマーの光重合挙動解析を行った。スリット光を照射する重合と通常の全面露光を行い,ゲル浸透クロマトグラフィーにより分子量,分子量分布,転化率を測定し,光照射条件による重合挙動を調べた結果,スリット光の照射により行なった光重合では分子量と転化率が格段に向上し,重合が効率良く進行することを見出した。(2) 分子拡散と分子配向の理論解析:光照射部と暗部の境界領域で分子が拡散移動する時間スケールを理論により解析した。様々な光パターンを照射し,重合過程の分子配向挙動をリアルタイム解析することに成功した。Fickの拡散方程式により理論的な拡散速度を算出し,重合過程で起こる分子拡散と分子配向挙動を定量的に可視化できた。
2: おおむね順調に進展している
分子拡散と分子配向の理論解析について,様々な光パターンを照射し,重合過程の分子配向挙動をリアルタイム解析することに成功した。Fickの拡散方程式により理論的な拡散速度を算出し,重合過程で起こる分子拡散と分子配向挙動を定量的に可視化できたことから大きな進展が見られた。一方,分子配向フィルムの力学解析装置の導入には遅れが生じたため計画を変更し,次年度検討することとした。総合的に判断して概ね順調に進展していると考えている。
今後は光重合誘起分子配向現象についてフィルム形成と力学挙動解析の観点から研究を遂行する予定である。(1) 分子配向フィルムの力学解析(2) 微細配向液晶高分子フィルムの作製(3) マイクロアクチュエータの挙動評価
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すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (11件) (うち国際学会 6件、 招待講演 11件) 備考 (1件)
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