研究課題/領域番号 |
22H02129
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
高坂 泰弘 信州大学, 学術研究院繊維学系, 准教授 (90609695)
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研究分担者 |
川谷 諒 信州大学, 繊維学部, 特任助教 (50911947)
赤江 要祐 信州大学, 繊維学部, 日本学術振興会特別研究員 (40837415)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 環状ビニルモノマー / ラジカル重合 / ケミカルリサイクル / 解重合 / 開環重合 / 共役置換反応 / カチオン重合 |
研究実績の概要 |
本課題は環状ビニルモノマーに焦点を当て,循環型ポリマーの創製を目指した研究である.2022年度は,まず3-メチレンフタリドおよびその類縁体について検討した.ラジカル重合で生成したビニルポリマーは,塩基加水分解により対応するモノマー原料を与えた.このときの分解挙動から,解重合が2つの機構で生じていることが予測された.この予測は,カチオン重合で合成したビニルポリマーの分解挙動の解析からも支持された.また,芳香環上にペンダント基を導入した種々のビニルポリマーを合成し,それらの単独重合/共重合により,溶解性が大きく異なるビニルポリマーを誘導できること,それらの加水分解により同一の原料を再生できることを見出した.ただし,この際に生じた分解物からのモノマー再生には課題を残した.具体的には,カルボキシ基で置換した芳香環を持つ3-メチレンフタリド誘導体では,分解物からのモノマー再生が従来法では困難なことがわかった.この原因は分子内環化反応の反応機構と密接に関係しており,置換基の再設計で克服できると予想している.一方,3-メチレンフタリドのカチオン重合では,開環重合が予測された条件でも,ビニル重合のみが選択的に生じた.計算化学による解析の結果,同モノマーは構造的に開環重合が困難であることが予測された. 環状アリールアクリレートを用いた検討では,当該モノマーのラジカル重合性が確認される一方で,モノマーがきわめて不安定で,通常条件では取り扱い困難であることが見出された.環状アクリレートの開環重合に関する研究では,当初予定していたモノマー群の開環重合性が乏しく,可逆過程になることが見出された.環歪みを増した新モノマーを設計し,当該モノマーの合成を達成した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
3-メチレンフタリド誘導体の研究では,予定していた開環重合が困難であることが明らかになった一方で,ビニル重合については3カ年計画のほぼ全てを完遂した.しかしながら,共重合体分解物からのモノマー再生に課題が見つかったため,次年度以降も継続検討する. 環状アリールアクリレートが不安定である可能性は当初から予想しており,代替モノマーへの移行も想定通りである.環状アクリレートの開環重合は,重合法の確立には至らなかったが,予定していたモノマー全てで重合を検討し,さらに次善策として新モノマーの合成も完了したため,順調に進捗したと評価した.
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今後の研究の推進方策 |
3-メチレンフタリド誘導体の研究ではすべてのマイルストーンを達成したため,次年度はその周辺領域を体系的に調査し,学術論文として成果発表できる形を整える.特に,カルボキシ基を置換した芳香環をもつ3-メチレンフタリド誘導体はポリマーの分解が速い一方で,モノマー再生に課題が見つかったため,再生可能性を念頭にモノマーの再設計を行う.開環重合については困難な状況だが,この過程でカチオン重合を初めとする新重合法が発見されたため,これらを利用した精密重合に展開する.これにより,ビニルポリマーの分解課程のメカニズムを明らかにする.環状アリールアクリレートについては,類似構造を持つ種々の環状モノマーに代替し,ラジカル重合と分解反応の検討を続ける.環状アクリレートの共役置換反応を利用した開環重合については,初年度に開発した新モノマーをスケールアップ合成し,重合検討を始める.
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