研究課題/領域番号 |
22H02137
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
森川 淳子 東京工業大学, 物質理工学院, 教授 (20262298)
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研究分担者 |
後藤 仁志 豊橋技術科学大学, 情報メディア基盤センター, 教授 (60282042)
高見澤 聡 横浜市立大学, 生命ナノシステム科学研究科(八景キャンパス), 教授 (90336587)
劉 芽久哉 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 研究員 (90872440)
五十幡 康弘 豊橋技術科学大学, 情報メディア基盤センター, 准教授 (10728166)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 有機単結晶 / 異方性熱拡散率 / ミクロスケール温度波熱分析法 / 窒化シリコン(SiNx)膜 / 面内熱拡散率 |
研究実績の概要 |
ソフトマテリアルは、限られた種類の原子から構成されながら、多彩な化合物を形成し、分子間の多様な相互作用によって複雑で階層的な高次構造を発現する。特に熱伝導特性においては、分子形状と分子間相互作用によって支配された異方的な熱伝達場の発現と、高次構造との相関が重要である。この異方的な熱伝導性と構造制御性という二つの特徴から、ソフトマテリアルは動的に熱伝導の指向性を制御可能なフレキシブルな熱機能材料としての応用が期待されている。本研究では、開発した局所領域測定用温度センサーを利用したミクロスケール温度波熱分析法(μ-TWA)を用いて、3軸の有機単結晶熱拡散率測定により、異方的な構造配置と熱拡散率の違い、および弾性変形における力学的挙動との間に相関関係を見出した。超弾性共結晶では強い分子間相互作用と弱い分子間相互作用の組み合わせによって、強弾性共結晶では弱い相互作用のみによって、変形の程度に違いが見られた。この比較において、超弾性共晶は強弾性共晶よりも高い熱拡散率を示し、これは超弾性共晶に対称的で比較的強固な分子間相互作用が存在することを示している。 一方、厚さ50nmまたは150nmの窒化シリコン(SiNx)薄膜上に形成した、ライン状またはスパイラル状の温度センサーアレイからなるデバイスを開発し、空気中および真空中のSiNx膜の面内熱拡散率を測定するロックインフォトサーマル法に適用した。ナノ薄膜上の2次元熱拡散は周辺環境との熱交換だけでなく、膜表面に沿った空気中の熱伝導による平行熱拡散の影響を受けることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
局所領域熱物性計測をミクロからナノ領域へ拡張していくプロセスをデバイス作成、測定法開発を中心に進めている。ナノスケールでの測定を確実に進めるためには、ミクロスケールにおける測定の正確さ、精度、異方性測定等の基礎データは必須であり、これらを有機単結晶を用いて、異方性熱拡散率を再現性よく測定することに成功した。および、ナノスケール加熱への準備状況も順調に進めている。
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今後の研究の推進方策 |
加熱可能なAFM探針を用いてナノスケール加熱点を生成し、その加熱に対する温度応答をナノスケール熱電対で計測し、これまでの熱物性計測の空間分解能を向上させる計測システムの構築する。ナノスケールリソグラフィーに用いられる加熱プローブを、MEMS型を含む種々のナノスケールセンサーの作成手法として用いると同時に、これをナノスケールの加熱手法として用いることで、熱物性計測におけるセンサー、ヒーターをともにダウンスケールする新たな方法論を提案する。局所変調熱源は、ナノスケールの熱物性測定において最も重要な技術の一つである。特に、物理的に接触可能な局所加熱源は、熱物性測定に採用されているにもかかわらず、まだ十分に確立されていないため、ナノスケールの局所体積における熱拡散率の測定を実証する。温度波熱分析法の原理を応用し、温度応答の周波数依存性のシグナル応答から、プローブされた試料体積の熱拡散率を推定する手法を検証する。測定対象にフォトレジストのマイクロスケール3次元構造を造形し適用する。
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