研究課題/領域番号 |
22H02139
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
前田 寧 福井大学, 学術研究院工学系部門, 教授 (60242484)
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研究分担者 |
松本 篤 福井大学, 学術研究院工学系部門, 助教 (20812978)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 高分子構造・物性 / ラマン分光法 |
研究実績の概要 |
試作した原子間力顕微鏡(AFM)-ラマン装置および角度分解顕微偏光ラマン装置を用いて、ポリ(ε-カプロラクトン)(PCL)とポリ(ブチレンスクシネート)(PBS)等のリングバンド球晶(RBS)における高分子鎖の配向解析を行い、その生成機構を考察した。PCLの偏光顕微鏡(POM)像にはギザギザとした消光リングが観察され、AFMでは明線に繊維状のラメラ、暗線に層状のラメラを確認できた。偏光ラマンマッピング測定では、蝶ネクタイ状とリング状パターンがみられ、CH2伸縮モードの水平成分は暗線で強く、C-C伸縮モードの水平成分とC=O伸縮モードの垂直成分は明線で強かった。半径方向に沿って行った角度分解測定では、明線から暗線にかけてのラマン強度の変化が急激であるのに対して、暗線から明線にかけては緩やかに変化していることから、PCLのラメラは、暗線から明線にかけてねじれながら成長した後に途切れ、その後、新しいラメラが成長し、再び暗線を形成する成長モデルを提案した。PBSのRBSは明部、暗部、グレー部、暗部が繰り返す二重のリングバンド構造であり、AFM像には尾根と谷があり、POM像の明部は尾根、グレー部は谷、暗部は斜面と一致した。角度分解測定では、CH2伸縮モードの水平成分はグレー部で、C-C伸縮モードの水平成分は明部で強く、C=O伸縮モードの垂直成分は暗部で強くなった。このようなラマン強度の周期的な変化は、ラメラの成長方向であるb軸まわりの連続的なねじれに起因すると考えた。 また、主鎖型ポリアルキルイミダゾリウム塩を、アルキル鎖長や対アニオンを変えて系統的に合成して、その結晶性を調査した。B-PC4-TFSIがRBSを形成することを見出し、複数の振動モードのラマン強度が同期して変動していることから、周期的な厚さの変動によりリングパターンが形成されていると推定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
原子間力顕微鏡(AFM)-ラマン複合装置および角度分解顕微偏光ラマン分光装置による解析は進んでいるが、コヒーレントアンチストークスラマン散乱による装置の開発が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
開発した原子間力顕微鏡(AFM)-ラマン複合装置および角度分解顕微偏光ラマン分光装置を用いて、種々の条件で作成したリングバンド球晶におけるラメラの配向を静的に解析する。また、より高い時間分解能での測定が可能であるコヒーレントアンチストークスラマン分光装置の開発を進め、リングバンド球晶の生成を動的に解析し、ラメラの組織化による高次構造形成とリング状パターン形成のメカニズムを明らかにする。
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