研究課題
前年度までに超分子ポリマーのうち、硫黄ポリマーを線上分子としたポリロタキサン(貫通型)と直鎖硫黄の両端に非共有結合部位を導入したモノマーを作成し、そのモノマーを非共有結合にて連結することで、主鎖型の超分子硫黄ポリマーを合成した。本年度は硫黄ポリマー間を非共有結合で連結する側鎖型の合成を行った。具体的には、硫黄ポリマー中にビピリジン部位を導入し、そのビピリジンと銅イオンとの金属ーリガンド相互作用を用いることで世界で初めて側鎖型の超分子硫黄ポリマーを合成したことを報告した。ビピリジンと銅イオンの錯体形成は、UV-Visスペクトル中にビピリジンと銅の錯体由来のピークが観測されたことから確かめられた。得られた側鎖型超分子硫黄ポリマーは、汎用の有機溶媒に可溶であることに加えて、通常の硫黄ポリマーより高分子量であった。これらの結果から、硫黄ポリマーにおいて超分子のコンセプトを導入することは、硫黄ポリマーの低分子量、不安定、溶媒へ不溶という欠点を克服するための有効な手法であることが示された。加えて、非共有結合の形成-解離が可逆な点を利用することで硫黄ポリマーの刺激によるポリマー形成-モノマーへの分解をコントロールでき、ケミカルリサイクルが可能であることも示した。また、主鎖型においても、水素結合型の超分子硫黄ポリマーの合成に成功しており、本コンセプトは特定の非共有結合でしか形成できないものではなく、汎用性があることも示した。
1: 当初の計画以上に進展している
研究計画において、3年間かけて合成するのを目標としていた貫通型、主鎖型、側鎖型の3種を、2年間で合成できていることから研究は計画以上の速度で進行していると言える。
申請者の研究全体の構想は、硫黄ポリマー合成において超分子の概念を導入し、超分子硫黄ポリマーという高分子科学における新しい学理を構築するとともに、硫黄ポリマー材料を創製することを目的としている。本年までで、研究の目標である3タイプ(貫通型・主鎖型・側鎖型)の超分子硫黄ポリマーの合成法を確立することができた。本年は、材料創生を目指した材料設計を行う。将来的には、学理の構築だけでなく、非共有結合の種類や合成方法の最適化、そして形態の複合化等を行い、電池材料やレンズ等の材料への応用を実現する。
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