研究課題/領域番号 |
22H02146
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
木田 敏之 大阪大学, 大学院工学研究科, 教授 (20234297)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | シクロデキストリン / チューブ型シクロデキストリン二量体 / 長鎖不飽和脂肪酸エステル / トランス脂肪酸 / 包接 / ゲスト選択性 / 吸着材 |
研究実績の概要 |
α-あるいはβ-シクロデキストリン(CD)二分子を複数のリンカーで連結した種々の二量体を合成し、長鎖不飽和脂肪酸エステルに対する包接能ならびに包接選択性について検討した。α-CD二分子を6つの2-ブロモ-m-キシリレンリンカーで連結したα-CD二量体はシス体のオレイン酸メチルやリノール酸メチルよりもトランス体のエライジン酸メチルに対して選択的な包接能を示した(包接選択性:エライジン酸メチル/オレイン酸メチル>9、エライジン酸メチル/リノール酸メチル>130)。このα-CD二量体を吸着材に用いて、オレイン酸メチル、リノール酸メチル、エライジン酸メチルの混合溶液からの各長鎖不飽和脂肪酸エステルの吸着除去率について検討したところ、エライジン酸メチルがオレイン酸メチルやリノール酸メチルよりも選択的に吸着除去(選択性:エライジン酸メチル/オレイン酸メチル>4、エライジン酸メチル/リノール酸メチル>8)された。このことから、このα-CD二量体は食用油中に混入したトランス脂肪酸エステルの選択的除去に有効に働くと考えられる。また、β-CD二分子を複数のリンカーで連結した種々のβ-CD二量体を合成し、これらの長鎖不飽和脂肪酸エステルに対する包接能ならびに包接選択性を検討した。β-CD二分子を7つのm-キシリレンリンカーで連結したβ-CD二量体はオレイン酸メチルに対して包接選択性を示したのに対し、7つのp-キシリレンリンカーあるいは2-ブロモ-m-キシリレンリンカーで連結したβ-CD二量体はトランス体選択性を示し、リンカーの種類を変えることで包接選択性を制御できることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
α-CD二分子を6つの2-ブロモ-m-キシリレンリンカーで連結したα-CD二量体を吸着材に用いることで、シス体のオレイン酸メチルとリノール酸メチル、トランス体のエライジン酸メチルの混合溶液中からエライジン酸メチルを選択的に吸着除去することに成功した。その一方で、2位に置換基をもたないm-キシリレンリンカーで連結したα-CD二量体では、トランス体選択性が大きく低下した。また、β-CD二分子を連結するリンカーをm-キシリレンリンカーからp-キシリレンリンカーに変えることで、シス体の長鎖不飽和脂肪酸エステル選択性からトランス体選択性に逆転させることにも成功した。 このように、α-CD二分子あるいはβ-CD二分子を複数のリンカーで連結したチューブ型CDホスト分子の包接空間のサイズを変えることで、長鎖不飽和肪酸エステルに対する包接選択性を制御できることがわかった。以上のことから、当初の計画通り順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
植物油や魚油中のオメガ3系高度不飽和脂肪酸成分を高選択的に回収できるチューブ型CDホスト分子の設計・合成と包接能の評価、ならびに食用油中のトランス脂肪酸成分の高効率除去を可能とするチューブ型CDホスト分子の設計・合成を引き続き行う計画である。 1. チューブ型CDホスト分子の設計と合成 研究代表者による最近の研究成果とこれまでに見出した、オイル中でゲスト包接能を示すCDホスト分子の設計に関する知見に基づき、β-CDならびにγ-CDを出発物質に用いて、それらを複数のリンカーで連結したチューブ型CDホスト分子を設計・合成する。また、チューブ型CDホスト分子の末端に種々の置換基を導入したホスト分子の設計・合成も行う。 2. 有機溶媒ならびに油中の長鎖不飽和脂肪酸エステルに対する包接能の評価 上記1で合成したチューブ型CDホスト分子を用いて、有機溶媒ならびに油中での種々の長鎖不飽和脂肪酸エステルに対する包接能を評価する。 3. 長鎖不飽和脂肪酸エステルとチューブ型CDホスト分子間での包接錯体の構造の解明と包接メカニズムの検討 二次元NMR、X線回折装置を用いて、各チューブ型CDホスト分子と長鎖不飽和脂肪酸エステル間で形成される包接錯体の構造を解析し、油中での長鎖不飽和脂肪酸エステル包接のメカニズムの解明を行う。
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