研究課題/領域番号 |
22H02162
|
配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
武田 博明 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (00324971)
|
研究分担者 |
柳瀬 郁夫 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (10334153)
小玉 翔平 埼玉大学, 理工学研究科, 助教 (30910096)
青柳 忍 名古屋市立大学, 大学院理学研究科, 教授 (40360838)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
|
キーワード | 圧電結晶 / 結晶育成 / 結晶構造解析 / 高温特性 / 機械的強度 |
研究実績の概要 |
今年度はオケルマナイト Ca2MgSi2O7(CMS)の Ca に対して Sr を置換した Ca2-xSrxMgSi2O7(Sr 置換オケルマナイト。以降、CSMS100x)単結晶について調査した。科研費 19H02797 の成果で、チョクラルスキー(Cz)法により x=0.3 までのバルク単結晶が育成されている。また、Jiang(1998)によると、育成方法に関する記述は無いものの、x≧0.64 で育成が困難になると報告されている。よって、0.3<x<0.64 の組成でバルク単結晶の合成報告が無い。そこで、Cz 法により組成が 0.3<x<0.64 である Sr 置換オケルマナイト単結晶を合成し、Sr 置換が電気的特性へ与える影響を調査した。Cz 法により CSMS100x (x=0、0.4、0.5、0.6)結晶を育成したところ、CSMS40 およびCSMS50 は結晶全体がメリライト型単相であるのに対し、CSMS60 では不純物としてメルウィナイト相が含まれていた。育成結晶の格子定数 a、c を算出した結果、Sr 置換量が大きくなるにつれ、a、c ともに増加する。また、Sr 置換量 x に対する格子定数比 a/c をプロットしたところ、x が増加するにつれて a/c が減少し、これらには負の相関があることがわかった。CMS、CSMS30、CSMS40 の圧電 d36 定数を測定した結果、それぞれ 5.71 pC/N、4.3 pC/N、4.04 pC/N となった。これより、Sr 置換 x により圧電 d36 定数が減少する傾向があった。以上、結晶育成の容易さや圧電定数を考慮すると、デバイス用途に最適な Sr 置換オケルマナイトの結晶組成は CSMS30~40 間にあることがわかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的にある高温振動子候補材料として最有力であるSr置換オケルマナイト単結晶に関して、Sr置換による結晶育成や物性への影響を詳細に調査し、CSMS30~40間に最適な組成があることを見出した。この組成は、1000℃まで①高い化学安定性・②温度安定な圧電特性・③高い抵抗率・④バルク結晶化が可能・⑤高い圧縮強度・⑥高い圧電d定数・⑦高い圧電g定数という7つの条件をすべて満たす可能性が高い。ただし、本年度申請時に掲げたスタナイト型結晶のバルク育成には到達しなかったため、今回の区分(2)の判定となった。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、最有力候補材料を決定するため、昨年度のCa2MgSi2O7(CMS)結晶の成果を踏まえ、CMSと同様に36モードが高いCa2ZnSi2O7(CZS)をベースとした新規メリライト型結晶を探索する。材料探索における元素戦略は、36モードを高くできるようCZS中のCa-O十面体席の多面体の歪みを小さく、かつ、サイズを大きくするよう、CMSと同様Sr置換を試みる。徐冷法により単相が得られる候補組成を決定し、Cz法にて単結晶を育成する。つぎに、ネットワークアナライザを使用して、育成した単結晶の材料定数(圧電定数、弾性定数、誘電率)を共振・反共振法で求める。また、燃焼圧センサとして重要な機械的強度を、燃焼圧センサの動作保証温度である400℃にて測定する。スタナイト型結晶については、まず、Li2CaSiO4バルク結晶を育成できるフラックスの探索を行う。フラックスが見つかり次第、バルク結晶化を試み、メリライト型結晶と同様な評価を行う。
|