研究課題/領域番号 |
22H02162
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
武田 博明 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (00324971)
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研究分担者 |
柳瀬 郁夫 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (10334153)
小玉 翔平 埼玉大学, 理工学研究科, 助教 (30910096)
青柳 忍 名古屋市立大学, 大学院理学研究科, 教授 (40360838)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 圧電結晶 / 高温特性 / 機械的強度 |
研究実績の概要 |
今年度はメリライト型結晶の中で圧電d36定数が最も高いと報告されているハーディストナイCa2ZnSi2O7(CZS)の単結晶の合成と高温特性について調査した。原料粉末をCZSの化学量論組成で秤量した後、チョクラルスキー法により単結晶を合成した。CZS結晶は剪断応力に対して電気分極が生じる2つの圧電定数d14、d36のみをもつ。この2つの圧電定数を共振反共振法により室温から700℃まで評価したところ、d14、d36共に130℃付近の相転移温度で急減し、d14はその後500℃付近まで緩やかに減少し、d36は150℃以降では変化しないことが明らかとなった。高温における電気抵抗率を測定したところ、500℃における電気抵抗率はX-cut基板で0.1 GΩ・cm、Z-cut基板で0.3 GΩ・cmであった。ここで、CZSと同じメリライト型結晶であるCa2MgSi2O7にて、CaサイトをSrで置換することで相転移温度が-50℃以下まで低下し、高温用途に適することが報告されている。そこで、CZSへのSr置換を考案し、CSZS100x (x = 0.0, 0.1, 0.2, 0.3, 0.4, 0.5)粉末結晶を合成した。粉末結晶を示差走査熱量計により-150℃から300℃の範囲で相転移温度を調査した。結果、CZSに見られた127℃の相転移由来の明瞭な発熱ピークはCSZS10からCSZS50で示されないことを明らかにした。 スタナイト型結晶について、Li2CaSiO4(LCS)バルク結晶を育成できるフラックスの探索を行った。フラックスとして塩化リチウム、フッ化リチウムが有効であることが分かり、LCS-LiCl・LiFの擬二元系相図を作製した。その相図よりLCS単結晶の析出する組成がLCS:フラックスのモル比10:90~60:40であることが判明し、今後の結晶育成に有用なデータを得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的にある新しい高温振動子候補材料としてハーディストナイト結晶を見出した。現在、相転移温度が130℃付近にあり、その温度前後で圧電特性が変化することが分かっている。この相転移温度をSr置換により制御できることが判明したものの、Sr置換CZS結晶をまだ育成できていない。一方、スタナイト型結晶LCSのバルク育成に有効なフラックス材を見出すことができた。以上より、今回の区分(2)の判定となった。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、Sr置換CZSのバルク結晶化を行う。まず粉末結晶にて単相が得られる組成を決定し、引き下げ法により単結晶が得られる候補組成を決定し、チョクラルスキー法にてバルク結晶化を行う。得られたバルク結晶について、インピダンスアナライザを使用して、育成した単結晶の材料定数(圧電定数、弾性定数、誘電率)を共振・反共振法で求める。また、燃焼圧センサとして重要な機械的強度を、燃焼圧センサの動作保証温度である400℃にて測定する。スタナイト型結晶について、見出したフラックスを用いてLCSバルク結晶を育成する。バルク結晶化に成功した際には、メリライト型結晶と同様な評価を行う。
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