研究課題/領域番号 |
22H02164
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
杉本 渉 信州大学, 学術研究院繊維学系, 教授 (20313843)
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研究分担者 |
中戸 晃之 九州工業大学, 大学院工学研究院, 教授 (10237315)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | ナノシート / フラクタル / 液晶 / コロイド / 多孔体 |
研究実績の概要 |
昨年度までに、ヘキサニオブ酸ナノシートコロイドに交流電場を印可する際に、直流バイアスを印可する(直流のオフセット電場を印可する)ことでナノシート液晶ドメインが泳動されるか検討した。高濃度ナノシートコロイドを用いた場合、ピッカリングエマルションに起因する直径300マイクロメートルの円形構造体が観察された。マクロ細孔を形成させるには好都合な細孔であると考えられる。 本年度は、主に液晶ドメインの構造とアイステンプレート(凍結乾燥)で得られる多孔質構造との関係を検討した。液晶ドメインの形成およびナノシート液晶はそれぞれ偏光顕微鏡(POM)、走査型電子顕微鏡(SEM)によりにより観察した。NLCの構造と凍結乾燥後の集積構造をそれぞれ観察した。 ナノシートコロイドを静置し、液晶ドメインの成長を促した後に交流電場を印加した。交流電場の印加によりナノシートはコロイド中で液晶ドメイン間の境界に沿って再配向し、重力方向に沿った縞状のマクロ構造を形成する。これを凍結乾燥すると、縞状のマクロ構造が観察された。一方、液晶ドメインが成長していないコロイドを凍結乾燥した場合、マクロ構造は見られなかった。このことから、凍結乾燥後の集積体のマクロ構造は、電場により配向したナノシート液晶のマクロ構造に由来すると考えられる。これらの結果より、凍結乾燥法により電場配向したナノシート液晶のマクロな構造を集積体へ転写する有効な手法であることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度計画していた構造形成手法の検討については、液晶ドメインが多孔質構造に反映されることを見出した。また、その構造解析についても一定の成果を挙げた。一方、非水溶媒の検討およびSAXSによる構造解析については次年度持ち越した。
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今後の研究の推進方策 |
研究課題3年目となる2024(令和6)年度は、これまでに得た成果を踏まえ、水系溶媒から非水溶媒へ展開する。非水溶媒をコロイド分散媒とすることで、より小さな氷晶が得られ、メソ領域の細孔制御が可能と期待できる(WP1)。また、コロイドのナノシートの状態解析(ゼータ電位、粒度分布)を進め、最終的に得られる細孔構造の評価・解析を進める。これにより、ナノシート液晶の構造が、凍結乾燥後に得られる多孔質構造体にどの程度構造決定に影響を及ぼすかを考察する。これらを通して、多孔体形成機構の解明に努める。また、配向制御ナノシートのフラクタル次元構造のモデル化のために、とくにナノシートの粒度分布と塩濃度に着目し、泳動現象、液晶形成のメカニズム解明を進める。
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