Ⅰ 多色化に向けた3元素系化合物量子ドットの作成:QDの発光色は粒径を変化させれば可能である。それに加え11-13-16族半導体の場合、元素の種類を変えるとバンドギャップが変化することは理論的に既知である。初年度は、それによって光の三原色のひとつである緑色に発色する量子ドットの合成に成功した。今年度は残りの2色である青と赤に発色する量子ドットの合成を試み、成功した。 Ⅱ 3成分化合物QDのマトリクスの工夫:GaSxでシェル層を形成した3成分化合物QDについては、GaSxマトリクスで包摂すると、量子効率の低下なく量子ドットをマトリクス中に固定することができた、この方法を拡張して、あらゆるマトリクス材料でも発光品質の低下を起こさずに固定化できる手法を確立した。 Ⅲ 光学固体デバイスの構築:合成した直後のコロイド状QDは、表面に有機分子リガンドが吸着している。これを基板等に塗布したQD膜の場合、リガンドの長さが短かければ外部から電子や正孔を注入できるが、それらはQD間を移動できてしまうため、濃度消光を引き起こす。リガンドを長くすれば濃度消光は抑えられるが、外部からの電子や正孔の注入がしにくくなるというトレードオフの関係にある。Ⅱの手法でQDよりもバンドギャップの広いマトリクスでQDを固体素子化ができれば、図11に示すようにマトリクスとQD間での整流性によって濃度消光を抑制しつつ、外部からの電子と正孔の注入を可能とする。これを作り上げることができれば、輝度および効率の高いEL素子が作製できることは、理論的に立証できており、初年度はその正当性をモデル実験により明らかとした。本年度は、そのモデル結果を基に、実際の3成分化合物QDに本法を適用し、電界発光素子として利用できることを実証した。
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