研究課題/領域番号 |
22H02174
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
中村 崇司 東北大学, 多元物質科学研究所, 准教授 (20643232)
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研究分担者 |
麻生 亮太郎 九州大学, 工学研究院, 准教授 (40735362)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 酸素発生触媒 / アニオン欠陥 / 電気化学リアクター |
研究実績の概要 |
層状ペロブスカイト酸化物La2-xSrxNiO4+δを対象にSr量xおよび酸素欠陥量δを制御することで、Ni価数と酸素欠陥量をそれぞれ独立に制御した材料を合成し、各因子がOER活性に与える影響を評価した。研究代表者が開発した電気化学リアクターを用いて任意量の酸素空孔および格子間酸素を導入し、Ni電子状態および酸素欠陥量を定量制御することに成功した。電気化学リアクターは酸化物イオン伝導体Y添加ZrO2を電解質として構成し、600-700℃にて、任意の酸素欠陥量を実現する平衡酸素分圧を維持することで、酸素欠陥の制御を行った。酸素欠陥がほぼ無い状態でNi価数を調整したLa2NiO4(Ni2+)、La1.8Sr0.2NiO4(Ni2.2+)、La1.6Sr0.4NiO4(Ni2.4+)はほぼ同じOER活性を示した。これは酸素欠陥が無い状態ではNi電子構造のOER活性への影響は小さいことを示唆する。先行研究で提案された「遷移金属eg電子数がOER活性の支配因子である」という仮説とは整合しない結果である。一方、Ni価数をNi2.2+で固定して酸素欠陥を調整したLa2NiO4.1(酸素空孔モル濃度:0、非占有格子間サイトモル濃度:1.9)、La1.8Sr0.2NiO4(酸素空孔モル濃度:0、非占有格子間サイトモル濃度:2.0)、La1.6Sr0.4NiO3.9(酸素空孔モル濃度:0.1、非占有格子間サイトモル濃度:2.0)においては、La2NiO4.1 = La1.8Sr0.2NiO4 < La1.6Sr0.4NiO3.9 という序列となった。これは、非占有格子間サイトはOER活性に寄与しないこと、格子酸素が欠損した酸素空孔がOER活性を有していること、を示唆する結果である。以上の結果は層状ペロブスカイト酸化物OER触媒を設計するうえで重要な知見となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
電気化学リアクターを使った酸素欠陥制御に成功し、酸素欠陥とNi電子状態がOER活性に与える影響を独立に評価することができた。その結果、酸素空孔が触媒活性を促進すること、酸素空孔が無い状態ではNi電子状態はOER活性に影響を与えないこと、を明らかにした。従来の研究とは異なる傾向も明らかになってきており、ペロブスカイト関連酸化物の触媒性能決定因子を明らかにするうえで重要な知見が得られつつある。以上のように本研究は概ね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
層状ペロブスカイト酸化物La2-xSrxNiO4+δの触媒性能決定因子が明らかになりつつある。今後はSr量と酸素欠陥量δの範囲を拡張して、現在の仮説がどこまで適用できるか、その妥当性を検証する。 またペロブスカイト型酸化物(La,Sr)CoO3材料を対象に、電気化学リアクターを使ったフッ素欠陥および塩素欠陥の導入を検討する。これは従来的な研究とは異なる新しいアニオン複合化(=アニオン欠陥制御方法)の実証となる重要な目標の一つである。今後は「電気化学リアクターを使ったアニオン欠陥導入」の実証に注力して研究を進める。異種アニオン種の分析には代表者所属機関の共用設備であるXPSやTOF-SIMSを利用するとともに、分担者麻生がTEMを駆使してナノスケールでの組成、構造分析を進める。また酸素発生触媒能の評価は代表者が進める予定である。
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