研究実績の概要 |
二次元層状酸化物及び三次元プルシアンブルー類似体(PBA)という典型的な二系統のナトリウムイオン電池正極活物質について、ナトリウムイオン脱挿入時の遷移金属-配位子の電子状態変化と充放電特性の相関を明らかにすることが本研究の目的である。本年度は主に、遷移金属の一部を部分置換した固溶体粉末の合成を行った。 アルカリ金属が二次元的な層間に脱挿入される層状酸化物について、単一の遷移金属からなる層状酸化物粉末NaxMO2(M = Mn, Fe, Co等の3d遷移金属)と、遷移金属を部分置換した固溶体粉末NaxM1M2O2(M1とM2は異なる3d遷移金属)を固相反応法により合成した。X線回折測定から、O3型NaCoO2にFeを1割以下置換した固溶体ではO3型構造が保持されていることが確認された。 また、アルカリ金属が三次元構造の空隙に脱挿入されるプルシアンブルー類似体(PBA)の合成を行った。単一の遷移金属(M = Mn, Co, Ni)からなる粉末試料NaxM[Fe(CN)6]yと、遷移金属を部分置換したPBA固溶体粉末試料Nax(M1, M2)[Fe(CN)6]y (M1, M2 = Mn, Co, Ni)を沈殿法で合成した。X線回折測定から、M1 = Mn, CoのPBAは三方晶、M1 = NiのPBAは立方晶であることが確認された。 放射光分光を用いた、合成した試料の正極活物質の遷移金属及び配位子の電子状態測定は令和5年度以降に行う予定である。
|