研究課題/領域番号 |
22H02180
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
川崎 晋司 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40241294)
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研究分担者 |
服部 義之 信州大学, 学術研究院繊維学系, 教授 (20456495)
石井 陽祐 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80752914)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | カーボンナノチューブ / 内包 / ヘテロ原子 / 光触媒 / 電極特性 / 酸素還元 |
研究実績の概要 |
単層カーボンナノチューブの化学修飾(窒素ドープ、ホウ素ドープ)を実施し、酸素還元触媒電極などの機能評価を行った。単層カーボンナノチューブへのホウ素のドープはホウ酸を用いた水熱処理とホウ酸トリイソプロピルをホウ素源とする高温処理の2通りの方法で行った。後者の実験を進めるため、ホウ素源となるホウ酸トリイソプロピルを加熱する電気炉とドーピングを行うために単層カーボンナノチューブを加熱する電気炉の2つを組み合わせた新しい実験装置を開発した。窒素ドープにおいてもこの2連の電気炉を用い、炭酸アンモニウムを窒素源として高温アンモニウムガス雰囲気で単層カーボンナノチューブを高温処理した。生成した化学修飾ナノチューブならびに別途用意した窒化ホウ素ナノチューブのキャラクタリゼーションはXPS, XAFSなどさまざまな分光実験を駆使して行った。ヘテロ元素ドープカーボンナノチューブならびにヘテロナノチューブ複合体の酸素還元・生成電極性能については回転リングディスク電極などを用いて電気化学測定により調べた。C60を内包したカーボンナノチューブは中空チューブよりも酸素還元性能に優れることを明らかにし、論文発表を行った。ヘテロナノチューブにヨウ素をいったん内包し、これを硝酸銀溶液中で処理することによりヘテロナノチューブとヨウ化銀の複合体を合成した。この複合体の太陽光二酸化炭素還元性能を評価したところ、単層カーボンナノチューブで同様の複合体を調整した場合に比べてはるかに高い二酸化炭素還元性能があることが明らかになった。この一連の実験においてナノチューブにヨウ素を保持することが実験の鍵となる。このヨウ素内包を利用した新しい二次電池電極ならびに太陽光水素生成に関する論文をそれぞれ国際誌において出版した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実績欄に記載した通り、当初予定していたヘテロ元素ドープカーボンナノチューブ、ヘテロナノチューブ複合体の調整、キャラクタリゼーションならびに機能評価という一連の実験を遅滞なく進められた。機能評価については酸素還元電極性能、電池電極性能、太陽光水素生成能、太陽光二酸化炭素還元能について評価を行うことができ、3本の論文をまとめることができた。こうした実績面に加えて、実験装置の整備が進んだことも研究を効率的に進めていくうえで大きな一歩であると考えている。具体的には異種元素ドープに使用する2つの電気炉を組み合わせたガス処理装置を構築することができた。この装置はさまざまな試料の調整に利用できる。また、酸素還元反応において問題となる反応電子数を直接的に評価できる回転リングディスク電極も整備できた。また、試料評価で学外の放射光施設でX線吸収実験を行う必要があったが、これについてもあいちシンクロトロン放射光施設、SPring8で実験を行えたことは大きな収穫であった。とくにSPring8で実施したヨウ素のK吸収端のXAFS実験は実験できるところが少ない。今後同様の実験を行う上で貴重な経験であり、大きな収穫であった。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き単層カーボンナノチューブの化学修飾(窒素ドープ、ホウ素ドープなど)を進めるとともに骨格構造を窒素、ホウ素などで構築したナノチューブについて酸化物、酸窒化物などと組み合わせて機能性複合体試料を調整する。調整した資料については放射光XAFS実験を含め徹底したキャラクタリゼーションを行う。酸素還元・生成電極性能については今年度整備した回転リングディスク電極を用いて反応電子数など詳細な反応メカニズム解析を実施する。酸素還元・生成電極性能をチューブ内側から制御する新しい実験にも本格的に取り組む。また、炭素と窒素からなるナノカーボンをベースとした光触媒研究を加速させ、これまでの水素生成や二酸化炭素還元だけでなく環境ホルモン分解やアンモニア合成などの難しい研究にも挑戦していきたい。さらにグラフェンよりも軽元素であるホウ素を主体とする新しい材料合成を行い、電池電極性能の評価などに挑みたい。いずれの機能性複合体においても機能発現メカニズムの解明は丁寧に実施し、その結果を合成実験にフィードバックすることでより性能の高い試料合成につなげていく。
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