研究課題/領域番号 |
22H02186
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
倉持 悠輔 東京理科大学, 理学部第二部化学科, 講師 (30457155)
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研究分担者 |
山口 友一 東京理科大学, 理学部第一部応用化学科, 助教 (30843122)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 二酸化炭素還元 / 金属錯体 / ポルフィリン / 光反応 / レニウム錯体 / 半導体光触媒 |
研究実績の概要 |
太陽光をより効率的に利用するために、最も可視域の吸収が強い有機分子の一つであるZnポルフィリンをレドックス光増感剤として用いることを目指した。速やかな電子消費等によりポルフィリン上の電子蓄積を抑制することで、特に光触媒的二酸化炭素還元反応において高い触媒活性と耐久性を示すことが分かった。 さらにZnポルフィリンとRe錯体の位置関係が光触媒的二酸化炭素還元反応に与える影響を調査するために、ZnポルフィリンとRe錯体のビピリジン配位子との結合位置が異なる3種類のポルフィリン=Re錯体二元系の合成に成功した。これらの触媒活性を調査したところ、トリエタノールアミン添加によって、3種の二元系で触媒活性が同じだったものが大きく変化し、5位を介して結合したものが他の2種及び従来の系の2倍以上の反応量子収率を示すことが分かった。これは5位で結合した光触媒では、トリエタノールアミンがZnポルフィリンとRe錯体の両方にキレート的に配位することができ、そのため速やかな二酸化炭素取り込みと反応が可能となり、それが反応活性向上につながったことを見出した。このような添加剤の超分子的な相互作用が触媒活性向上に多大な影響を与えた系は他に類を見ないものであり、今後の分子設計において新たな指針を与えた。 また、ホスホン酸基を導入したポルフィリン=Re錯体二元系の合成にも成功し、ホスホン酸部位を介して半導体光触媒に非常に高密度かつ強固に結合させることができることが分かった。 光増感剤として相補的配位イミダゾリルポルフィリンダイマーを用いる系についても、ダイマーにRe錯体を直結させた系の合成に成功し、ポルフィリンダイマーとRe錯体間の架橋部位が触媒活性に与える影響にも調査している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ZnポルフィリンとRe錯体の位置関係と触媒活性の関係を調査していくにあったって、トリエタノールアミンがZnポルフィリンとRe錯体にキレート的に相互作用することで触媒活性と耐久性が大きく向上するという現象を予期せず発見した。このような添加剤の超分子的な相互作用が触媒活性に寄与した例は他に無く、触媒の分子設計における新たな指針を示すことができた。
当初計画していたホスホン酸を有するポルフィリン=Re錯体二元系の合成に成功し、極性溶媒のジメチルホルムアミド中でも半導体光触媒に高密度かつ強固に結合できることを確認した。また半導体光触媒上に修飾したポルフィリン中心に金属を自由に導入できることも見出した。さらに、相補的配位イミダゾリルポルフィリンダイマーとRe錯体間の距離と活性依存性を調査するためにダイマーにRe錯体を直結させた系の合成にも成功した。
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今後の研究の推進方策 |
リン酸部位を導入したポルフィリン=Re錯体二元系を種々の半導体光触媒(助触媒担持)と組み合わせ、水を電子源として二酸化炭素を還元できる系の構築を目指す。また、固体表面に吸着されたポルフィリン=Re錯体連結系光触媒において二つ目の電子がどのように供給されるか不明である。そこで電子移動に関与しない酸化アルミニウムの表面にポルフィリン=Re触媒連結系を結合させ、固体表面上のポルフィリン=Re錯体連結系光触媒の振る舞いを調査する。
ポルフィリン=Re錯体二元系の反応機構についても時間分解分光を駆使して調査し、そのデータをもとに、更に反応量子収率の高い系の構築を行う。
相補的配位イミダゾリルポルフィリンダイマーとRe錯体との結合距離やビピリジン上の結合位置が及ぼす影響を確かめるため、架橋基の長さを変化させたものを合成していく。まずはポルフィリンとレニウム錯体の直結系及びビピリジンの結合位置を変えたものについて調査を進める。ポルフィリンダイマーにもホスホン酸基を導入し、これと半導体光触媒とを組み合わせた系の構築および触媒活性調査を行う。
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