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2022 年度 実績報告書

階層的自己組織化を鍵とする生き物のような超分子マテリアル創発

研究課題

研究課題/領域番号 22H02195
配分区分補助金
研究機関京都大学

研究代表者

窪田 亮  京都大学, 工学研究科, 講師 (00753146)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2026-03-31
キーワード超分子 / ヒドロゲル / コアセルベート / 反応拡散 / 共焦点顕微鏡
研究実績の概要

本研究の目的は、人工超分子で階層的自己組織化を実現し、細胞のような「多成分性」「協働性」「非平衡性」を示す人工超分子システムを創発することである。超分子ヒドロゲルは、ゲル化剤と呼ばれる有機小分子が水中で自発的に自己集合したファイバー状構造体からなる。代表者はこれまでに、複数の構造の異なるゲル化剤の独立な超分子ファイバーからなるヒドロゲルの創出・機能化に成功した。令和4年度(1年目)では、主に超分子-高分子複合ヒドロゲルについて、マイクロスケールでのネットワーク構造の制御を達成した。代表者はこれまでに、ある種のペプチド型ゲル化剤と物理架橋高分子ゲルであるアガロースを混合した複合ヒドロゲルを合成している。この複合ヒドロゲルでは、超分子および高分子ネットワークが独立に存在していることを共焦点レーザー顕微鏡観察から明らかとしている。しかしながら、複合ヒドロゲルにおいて独立なネットワーク以外が存在するかについては不明であった。そこで代表者が保有している種々の超分子ゲル化剤とアガロースから複合ヒドロゲルを作成し、共焦点顕微鏡観察を行ったところ、独立ネットワーク以外に三種類の相互作用ネットワークを発見した。さらにネットワーク構造を決定する支配因子の同定に成功した。興味深いことに、ある種の複合ヒドロゲルにおいて、マイクロニードルで穴を開けることで、複合ヒドロゲルの三次元パターン化に成功した。
また代表者は、ジフェニルアラニンのC末端に嵩高いtBu基を修飾することで、コアセルベートを形成することに成功した。開発したコアセルベートは、内部に様々な(蛍光)小分子を濃縮することが可能であった。その濃縮能を利用することでコアセルベート内部でのペプチド合成に成功した。さらに光ラジカル重合を内部で行うことで、パルス光の時間パターンに応じてコアセルベート物性を制御することに成功した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

主に超分子-高分子複合ヒドロゲルについて、マイクロスケールでのネットワーク構造の制御を達成した。代表者はこれまでに、ある種のペプチド型ゲル化剤と物理架橋高分子ゲルであるアガロースを混合した複合ヒドロゲルを合成している。この複合ヒドロゲルでは、超分子および高分子ネットワークが独立に存在していることを共焦点レーザー顕微鏡観察から明らかとしている。しかしながら、複合ヒドロゲルにおいて独立なネットワーク以外が存在するかについては不明であった。そこで代表者が保有している種々の超分子ゲル化剤とアガロースから複合ヒドロゲルを作成し、共焦点顕微鏡観察を行ったところ、独立ネットワーク以外に三種類の相互作用ネットワークを発見した。さらにとして、ネットワーク形成の順番とネットワーク間相互作用がネットワーク構造を決定する支配因子だと同定した。興味深いことに、ある種の複合ヒドロゲルは、時間依存的にsub mmスケールのネットワークが変化することを発見した。この過渡的現象を利用し、複合ヒドロゲルに3Dプリンティングで作成したマイクロニードルでsub mmスケールの穴を開けることでの三次元パターン化に成功した。また代表者は、ジフェニルアラニンのC末端に嵩高いtBu基を修飾することで、コアセルベートを形成することに成功した。コアセルベートは液液相分離から形成する液体性超分子であり、生命の起源研究における区画化に寄与したとして注目を集めている。本研究で開発したコアセルベートは、内部に様々な(蛍光)小分子を濃縮することが可能であった。その濃縮能を利用することでコアセルベート内部でのペプチド合成に成功した。さらに光ラジカル重合を内部で行うことで、パルス光の時間パターンに応じてコアセルベート物性を制御することに成功した。
以上の結果から、当初の予定通り進展していると言える。

今後の研究の推進方策

今年度の成果を受けて、次年度は「超分子-高分子複合ヒドロゲルの三次元パターニング」の外部刺激制御と機能開拓を目指す。前述した超分子-高分子複合ヒドロゲルにおいて、光応答性ペプチド型ゲル化剤を組み込むことで、光照射による複合ヒドロゲルの三次元パターニングの戦略を構築する。さらに三次元パターン化した複合ヒドロゲルの機能開拓にも挑戦する。具体的には、生体活性分子(ペプチド・タンパク質)の精密配列や薬物徐放材料としての応用を探索する。さらに階層的構造構築のみならず、細胞のような非平衡ダイナミクスを示す超分子システムの構築にも展開する。
また初年度に発見したジペプチド型コアセルベートについても、幅広く発展させる。ジフェニルアラニン骨格を基盤として多様な刺激応答性官能基を修飾することで、機能性コアセルベートの開発に取り組む。具体的には温度応答性や光応答性を評価する。得られた刺激応答性に基づいた構造変化のリアルタイム共焦点観察や物性・機能制御を達成する。

  • 研究成果

    (17件)

すべて 2023 2022 その他

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (12件) (うち国際学会 2件、 招待講演 3件) 備考 (2件)

  • [雑誌論文] Four distinct network patterns of supramolecular/polymer composite hydrogels controlled by formation kinetics and interfiber interactions2023

    • 著者名/発表者名
      Nakamura Keisuke、Kubota Ryou、Aoyama Takuma、Urayama Kenji、Hamachi Itaru
    • 雑誌名

      Nature Communications

      巻: 14 ページ: 1696

    • DOI

      10.1038/s41467-023-37412-0

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Coordination chemogenetics for activation of GPCR-type glutamate receptors in brain tissue2022

    • 著者名/発表者名
      Ojima Kento、Kakegawa Wataru、Yamasaki Tokiwa、Miura Yuta、Itoh Masayuki、Michibata Yukiko、Kubota Ryou、Doura Tomohiro、Miura Eriko、Nonaka Hiroshi、Mizuno Seiya、Takahashi Satoru、Yuzaki Michisuke、Hamachi Itaru、Kiyonaka Shigeki
    • 雑誌名

      Nature Communications

      巻: 13 ページ: 3167

    • DOI

      10.1038/s41467-022-30828-0

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Temporal Stimulus Patterns Drive Differentiation of a Synthetic Dipeptide-Based Coacervate2022

    • 著者名/発表者名
      Kubota Ryou、Torigoe Shogo、Hamachi Itaru
    • 雑誌名

      Journal of the American Chemical Society

      巻: 144 ページ: 15155~15164

    • DOI

      10.1021/jacs.2c05101

    • 査読あり
  • [学会発表] Phototriggered non-equilibrium spatial patterning of peptide nanofibers in a self-sorted supramolecular double-network hydrogel2023

    • 著者名/発表者名
      Ryou Kubota
    • 学会等名
      The Peptide Materials GRC
    • 国際学会
  • [学会発表] 超分子・高分子複合ゲルにおける光駆動非平衡パターニング2023

    • 著者名/発表者名
      生田 優力、中村 圭佑、窪田 亮、浜地 格
    • 学会等名
      日本化学会 第103春季年会
  • [学会発表] Real-time confocal imaging of formation and dynamics of a dipeptide-based coacervate2023

    • 著者名/発表者名
      Ryou Kubota, Yuchong Liu, Taro Hiroi, Itaru Hamachi
    • 学会等名
      日本化学会 第103春季年会
  • [学会発表] Repeated elongation and shrinkage of supramolecular fibers induced by surfactant micelle2023

    • 著者名/発表者名
      Shogo Torigoe, Ryou Kubota, Kazutoshi Nagao, Itaru Hamach
    • 学会等名
      日本化学会 第103春季年会
  • [学会発表] 界面活性剤添加によって繰り返し重合/脱重合する超分子ファイバー2022

    • 著者名/発表者名
      鳥越 祥吾、窪田 亮、長尾 和俊、浜地 格
    • 学会等名
      生体機能関連化学部会 若手の会 第33回 サマースクール
  • [学会発表] 周波数依存的な応答挙動を示すジペプチド型コアセルベート2022

    • 著者名/発表者名
      窪田 亮
    • 学会等名
      生体機能関連化学部会 若手の会 第33回 サマースクール
  • [学会発表] 界面活性剤添加により伸長と収縮を繰り返す超分子 ファイバーの構築とその場観2022

    • 著者名/発表者名
      鳥越 祥吾、長尾 和俊、窪田 亮、浜地 格
    • 学会等名
      第71回高分子討論会
  • [学会発表] 超分子・高分子複合ゲルの多様なネットワーク構造の 発見とその支配因子の解明2022

    • 著者名/発表者名
      中村 圭佑、窪田 亮、浜地 格
    • 学会等名
      第71回高分子討論会
  • [学会発表] 時間パターン依存的な刺激応答性を示すジペプチド 型コアセルベートの開発2022

    • 著者名/発表者名
      窪田 亮、鳥越 祥吾、浜地 格
    • 学会等名
      第71回高分子討論会
  • [学会発表] Non-equilibrium patterning of a supramolecular double-network hydrogel inspired by morphogenesis2022

    • 著者名/発表者名
      Ryou Kubota
    • 学会等名
      The 2nd KU-UNIST Joint Symposium on Chemistry and Materials Science
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 超分子の新時代を目指した多成分・非平衡散逸系ゲルシステム2022

    • 著者名/発表者名
      窪田 亮
    • 学会等名
      第184回東海高分子研究会講演会
    • 招待講演
  • [学会発表] 生物からインスパイアされた多成分・非平衡系超分子ソフトマテリアルの開発2022

    • 著者名/発表者名
      窪田 亮
    • 学会等名
      第2回 発動分子科学サロン 「発動分子と分子集合体」
    • 招待講演
  • [備考] 代表者が運営するホームページ

    • URL

      https://rkubota-chem.jimdofree.com

  • [備考] 代表者が所属する研究室のホームページ

    • URL

      http://www.sbchem.kyoto-u.ac.jp/hamachi-lab/

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公開日: 2024-12-25  

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