研究課題/領域番号 |
22H02197
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
北條 裕信 大阪大学, 蛋白質研究所, 教授 (00209214)
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研究分担者 |
末武 勲 中村学園大学, 栄養科学部, 教授 (80304054)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ヒストン / 脂質化 / ヌクレオソーム / 化学合成 |
研究実績の概要 |
ヒストンのN-末端領域ではメチル化等、数多くの翻訳後修飾が起こり、それらが可逆的にダイナミックに変化して遺伝子発現が制御される。最近、ヒストンの一つであるヒストンH4に脂肪酸が付加される(脂質修飾)という意外な報告がなされた。DNAと結合する極性の高いヒストン疎水性の高い脂肪酸が付くとどうなるのか?ヒストン脂質化の発見は、核膜脂質との相互作用によってヌクレオソームの局在を変化させるという新規な遺伝子制御機構の存在を予測させる。 本研究では、現在特定されているヒストンH4の脂質化部位を足がかりとして、タグ化脂質を利用したヒストンの脂質化部位の同定、化学的な脂質化ヒストンの大量合成、そして脂質化ヒストンを含むヌクレオソームの構造解析と細胞内での機能解析という3ステップの研究により、ヒストンの脂質化による遺伝子調節という新しいエピゲノムを提案する目的で行っている。 本年は、化学合成した脂質化H4を用いて、国際共同研究によりヌクレオソームを形成することを試みた。その結果、脂質化H4によりヌクレオソームの形成が非常に起こりにくくなること、その一方でクライオ電子顕微鏡解析により、脂質化ヌクレオソームの構造自体は脂質を持たないヌクレオソームとほとんど同じであることがわかった。より詳細に解析を進めるべく、ヌクレオソームの形成に必要なヒストン4種の大量発現を行うとともに、発現したH4に対して脂質類似体を結合させることにより、効率よく脂質化H4のミミックを得る手法を確立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度、国際共同研究により脂質化ヌクレオソームの構造解析に成功した。当初、脂質化H4を用いたヌクレオソームの構造解析にはかなりの時間がかかると予想していたが、国際的な連携が順調に進み予想外に早く構造解析を達成した。構造解析結果によると、脂質の有無でヌクレオソームの構造に変化がないことが明らかになった。脂質の疎水性、また立体障害を考えると、これは予想外の結果であり、今後の研究指針を考える上で貴重な情報を与えるものである。それと同時に末武教授との共同研究により、すべてのヒストンタンパク質が大量に発現できるようになり、手元でヌクレオソームが形成できるようになったことも、大きな進歩であり、全体として順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
脂質化によりヌクレオソームの構造変化がないことが明らかになったことにより、今年度は脂質化によるヌクレオソームの安定化の解析、さらに脂質膜との相互作用解析等の研究を進める予定である。これにより脂質化の生物学的な機能の解析をすすめる。クライオ電子顕微鏡解析により、脂質化はヌクレオソームの構造自体は変化させないことが明らかになったため、必ずしも正確な脂質を持つH4を用いた解析を行う必要がなくなった。このため、合成品ではなく大腸菌で発現したH4を脂質類似体で特異的に修飾して、ヌクレオソーム形成に用い、効率的に上記の研究を行う予定である。さらに細胞内での脂質化ヌクレオソームの存在位置を調べるため、蛍光標識した脂質化ヒストンH4を用いてヌクレオソームを形成し、その細胞内での局在を蛍光顕微鏡で解析する研究も同時に進める予定である。
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