研究課題/領域番号 |
22H02198
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
木村 哲就 神戸大学, 理学研究科, 准教授 (70506906)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 時間分解測定 / ABCトランスポーター / ヘム / 分子輸送 / ATP / ナノディスク |
研究実績の概要 |
2021年度までに界面活性剤を用いて可溶化したヘムABCトランスポーターBhuUVを用いて計測を行い、時間分解紫外/可視吸収分光、赤外吸収分光に成功していた。しかし、輸送基質であるヘムと界面活性剤であるDDMが非特異的に相互作用し、紫外/可視吸収スペクトルに特徴的なピークを示すため、バックグラウンドとしてスペクトルを歪ませてしまうことから、2022年度においては BhuUVをナノディスク化あるいは amphipol (PMAL-C8)によって可溶化することによって溶媒から界面活性剤を除去することを試みた。その結果、バックグラウンドの大幅な低減および、nd-BhuUV あるいは amphipol 再構成BhuUVとヘムとの相互作用をより特異的に観察できることが確認された。しかし、nd-BhuUV の収率は10%と低く、BhuUVの収量が低いことと合わせて、分光測定を行うためには現実的でないことも留意しなければならない。 本研究は ATPの結合・ 加水分解反応、ペリプラズムタンパク質(BhuT) とBhuUV の膜貫通ドメインの離合・集散、輸送基質であるヘムの受け渡し・輸送、核酸結合ドメインおよび膜貫通ドメインのコンフォメーション変化、という4つのダイナミクスの相関を明らかにすることを目的としたものである。2022年度は上記のDDM再構成あるいは amphipol 再構成BhuUVを用いて、ヘム輸送ダイナミクスを、研究代表者が平成25年度に構築したマイクロ秒の時間分解能をもつ自作の時間分解可視吸収スペクトル測定装置を用いて精密計測を行った。また、2価および3価の鉄イオンを含有するヘムによって輸送に違いが起こるかどうかを確認するために、特に還元型での計測を安定に行う事のできる嫌気チャンバーを導入し、時間分解測定を行えるように設定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画の通り、ナノディスクおよびamphipol再構成型のABCトランスポーターの調製に成功し、その分光測定を行うことができた。これらの試料を用いて、2023年度以降、種々の分光測定を推進できる基盤が整った。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は ATPの結合・ 加水分解反応、ペリプラズムタンパク質(BhuT) とBhuUV の膜貫通ドメインの離合・集散、輸送基質であるヘムの受け渡し・輸送、核酸結合ドメインおよび膜貫通ドメインのコンフォメーション変化、という4つのダイナミクスの相関を明らかにすることを目的としたものである。2022年度は上記のDDM再構成あるいは amphipol 再構成BhuUVを用いて、ヘム輸送ダイナミクスを、研究代表者が平成25年度に構築したマイクロ秒の時間分解能をもつ自作の時間分解可視吸収スペクトル測定装置を用いて精密計測を行うことに成功した。2023年度以降は2価および3価の鉄イオンを含有するヘムによって輸送に違いが起こるかどうかを確認するために、特に還元型での計測を安定に行う事のできる嫌気チャンバーにおける時間分解測定を行う。 また、コンフォメーション変化を測定するために、パルスESRを用いたスピンラベルESR測定を行う予定である。
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