生体内では、多種多様な生命現象が、様々な仕組みを駆使して、遺伝情報を正しい場所で、適切な時期に、必要な量巧妙に読み出すことにより精密に制御されている。このことは、この遺伝情報の読み出しを生物とは独立に制御できるようになれば、遺伝子の発現調節や加工などを介して、発生、分化、老化などの生命現象の解明やガン、遺伝病などの疾患の治療法の開発につながり、学術、健康・福祉、経済、社会など幅広い分野での多大な貢献が期待される。そのための一つのアプローチとして、標的の遺伝情報、すなわちゲノムDNAやmRNAの特定の標的配列に結合できる人工タンパク質を創出できれば、この人工タンパク質単独、あるいはこのタンパク質に別の機能ドメインを連結した融合タンパク質を用いて、標的の様々な生命現象を望むように制御することが可能となる。当研究室ではこれまで、セントラルドグマにおける、DNA情報の読み取りを制御すべく、ゲノム上の標的DNA配列に結合する人工DNA結合タンパク質を独自に開発し、これまでガンなどの遺伝子発現やウイルスゲノム切断によるウイルスの不活性化などを実現してきた。そこで、本研究では、セントラルドグマのもう一つの重要なRNA情報の読み取りを制御すべく、新規の人工RNA結合タンパク質の開発を目指している。そのため、本年度では、これまでの知見に基づき、各種タンパク質をデザインした。当該遺伝子を大腸菌発現ベクターにクローニングした後、形質転換した大腸菌で発現量・可溶化条件を検討した。これら条件を最適化し、各目的タンパク質を大量発現させ、溶菌した後、精製し、濃度を測定した。得られたタンパク質の各標的RNA配列への結合力や特異性を検証し、比較・検討した。
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