研究課題/領域番号 |
22H02201
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
野村 渉 広島大学, 医系科学研究科(薬), 教授 (80463909)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ゲノム編集 / CRISPR-Cas / 細胞周期 / オフターゲット作用 / タンパク質間相互作用 |
研究実績の概要 |
本研究ではタンパク質分解より迅速な応答が得られる細胞内局在変化(細胞質⇔細胞核)を利用した細胞周期制御型ゲノム編集の基盤構築を第一の目的とし,細胞周期制御型システムをBEにも適用し,塩基置換型ゲノム編集でのDNAおよびRNAオフターゲット作用抑制の実現を第二の目的としている。2022年度は細胞周期に同期したanti-CRISPRの細胞内局在変化についての蛍光観察と細胞内局在変化によるCRISPR-Cas9活性制御効果の検討を進めた。細胞周期に依存した細胞内局在変化を示すドメインにanti-CRISPRであるAcrIIA4と蛍光タンパク質を融合させ,蛍光顕微鏡で細胞内局在変化を確認した。現在,局在変化の定量的な解析手法について検討を進めている。CRISPR-Cas9の活性制御効果についてはS/G2期に細胞質への局在変化を示した後も一部のanti-CRISPRが細胞核内に残存している可能性が確認されており,それに伴ってCRISPR-Cas9活性の抑制効果が持続していることが確認されている。細胞質への局在変化が起こると同時にCRISPR-Cas9活性が誘起するためには局在変化だけでなくタンパク質分解など他の手法と組み合わせる方法を検討する必要があると考えられ,現在検討を進めている。dCas9-VPRを利用した転写活性化手法による細胞内でのCRISPR-Cas9とanti-CRISPRの相互作用解析についてはレポーターとして利用するGFPの半減期を最適化することで細胞周期に応じた相互作用の変化を適切に検出できる系を構築することができた。2023年度から開始を予定していたBase Editorへの応用についても既に実験に着手しており,anti-CRISPRにCdt1あるいはGemininを融合したタンパク質と各種Base Editorを組み合わせて細胞内で発現することによって一塩基置換反応の結果への影響を解析している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画の通り,2022年度は細胞周期に同期したAnti-CRISPR細胞内局在変化の蛍光観察と細胞内局在変化によるCRISPR-Cas9活性制御効果の検討を進め,予備的に得ていた結果から更に解析条件などを最適化することでより詳細な解析を実現することができており,今後必要とされる改善点なども明確にすることができたことから,順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度についても継続して細胞周期に応じた細胞内局在変化を利用したCRISPR-Cas9の活性化制御について検討を進めていく。特に細胞内局在変化ドメインについて,S/G2期により効率良く細胞質へ移行するためにドメインへの変異導入や他の局在変化ドメインや核外移行シグナル配列との組み合わせなどを検討する。Base Editorのオフターゲット作用抑制に関する検討については2022年度に発現ベクターなどの構築を終えることができたことから,2023年度はそれらを使用した一塩基置換反応の解析とオフターゲットサイトでの変異導入について解析を進めていく。
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