研究課題
天然変性領域を持たない小胞体局在シャペロンの相分離機構を明らかにするため、液滴形成に必要な最小単位の領域を特定し、液滴の表面や内部の構造情報を得ることは最も重要である。そこで各ドメインを分離し相分離能を位相差顕微鏡やホログラフィック顕微鏡で評価した結果、相分離に不可欠な領域を特定した。さらにこの領域にどのような構造変化が伴うのかをNMRで検証した結果、相分離駆動に重要な残基を特定した。小胞体内相分離の生理学的意義を追求するため、U2OS細胞を用いて、免疫沈降法を用いて検証した結果、細胞内fociを確認することが出来た。小胞体局在シャペロンの相分離が特定の基質を濃縮するかどうかをGFPtagを用いた蛍光顕微鏡、およびホログラフィック顕微鏡で検証した。その結果、幾種かのシャペロン、酵素、基質、低分子化合物の濃縮の可視化に成功し、濃縮における選択性を示すことが出来た。ホログラフィック顕微鏡からは、相分離駆動だけでなく、制御する特定因子を見出した。今後in vitro, 細胞生物学におけるこれら因子の機能評価を行う必要がある。さらにホログラフィック顕微鏡液滴内部が酸化還元依存的に内部の密度が変化することを示唆する結果を得た。そこで、新たなチオール化合物の開発は酸化還元依存的相分離制御の化学制御が可能になると考え、幾種かの新規チオール化合物を開発した。その結果、汎用されるチオール化合物であるグルタチオンよりも遥かにチオール・ジスルフィド交換反応を触媒することが出来ることを示し、論文として発表した。
1: 当初の計画以上に進展している
当初の計画に比べ、1. 相分離駆動領域の特定、2. 細胞内fociの評価、3. ターゲット基質の濃縮において、どれも格段の進展がみられ、現在論文を投稿準備中であることからも当初の計画以上に進展している。また、4. 酸化還元依存的に相分離現象の制御も示しつつあり、5. その制御因子である新規化合物の開発も進んでおり、当初の計画以上に進展しているを選定した。
小胞体内相分離の生理学的意義を追求するため、U2OS細胞を用いて、免疫沈降法を用いて検証した結果、細胞内fociを確認することが出来た。今後このfociの生理学的意義を追求するため、幾種かの分泌タンパク質のフォールディングや分泌について検証する必要がある。また本相分離現象が、幾種かのシャペロン、酵素、基質、低分子化合物の選択的濃縮を示したが、今後in vitro, 細胞生物学におけるこれら因子の濃縮に伴う機能評価を行う必要がある。さらに新規チオール化合物の開発が進んでいるが、本相分離現象への影響を今後in vitroで見積もり、最終的に細胞内評価する必要がある。
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