研究課題/領域番号 |
22H02227
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
小林 佑理子 岐阜大学, 応用生物科学部, 准教授 (40610952)
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研究分担者 |
藤田 美紀 国立研究開発法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, 上級技師 (70332294)
井内 聖 国立研究開発法人理化学研究所, バイオリソース研究センター, 専任研究員 (90312256)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | シロイヌナズナ / アルミニウム耐性 / トランスクリプトーム / ゲノムワイド関連解析 / 遺伝子ネットワーク / ナチュラルバリエーション / 酸性土壌 |
研究実績の概要 |
世界の耕作可能地の約50%に分布する酸性土壌は、農業を制約する問題土壌であり、そこでは多量の肥料投入がない限り耕作地に適さない。そのため、低資源投入での生産性向上に向けた植物の酸性土壌耐性機構や遺伝子を理解するための研究が世界中で進められている。私たちは、これまでに酸性土壌で植物毒性を示すアルミニウム(Al)に対する植物の耐性が、複雑な遺伝子発現制御ネットワークにより支配されていることを示してきた。 本研究では、Al耐性バリエーションを示すシロイヌナズナ野生系統の網羅的な遺伝子発現データ(トランスクリプトーム)解析と遺伝子発現量ゲノムワイド関連解析(GWAS)を実施し、Al耐性と相関のある遺伝子共発現ネットワークを構成する遺伝子群を明らかにすることで、システム的Al耐性機構の解明を試みる。 使用系統の整備が予定外の理由で遅延していたが、これまでに、遺伝的背景が異なる7つのグループに分けられるシロイヌナズナ約100系統のRNAシーケンス解析によりトランスクリプトームデータを取得した。その結果、トランスクリプトームデータの主成分解析から根部と地上部の発現類似度は低く、それぞれ異なるAl耐性遺伝子発現ネットワークが示唆された。遺伝子型グループ間では大きな差は確認されなかった。しかしながら、グループ間で有意な遺伝子発現差異は、約70の既知Al耐性遺伝子のうち22遺伝子を含む、少なくとも600以上の遺伝子で確認された。これらは発現量GWASにより発現制御に関与する遺伝子の特定に有用であり、今後はその結果から共発現ネットワーク解析を実施し発現制御機構に関連するモジュール同定を試みる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の予定に反し、植物栽培の途中で栽培用機器の一部に不測の故障が生じ、必要量の植物栽培ができなかった。既存の使用可能な機器のみで、不足した植物の栽培量を補うため、植物栽培実施期間を延長する必要が生じた。その後も、使用する系統の遺伝子型の要因により採種までに時間を要し、必要な系統の種子をそろえるまでに追加の時間を要した。また、発芽率が不良の系統については解析サンプルを整えるまで追加の時間を要した。以上のことから進捗状況は遅れているが、繰り越したRNA-seq解析は予定年度内に終えることができた。
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今後の研究の推進方策 |
目標とする系統(数)のRNA-seqデータの取得までに遅れが生じたため、今後は当初予定の根部だけでなく地上部のRNA-seq解析データの解析および、コントロール区のデータも含め植物個体のAl耐性について解析していく。最も効果の高いAl耐性モジュールおよび発現制御系の特定に焦点を絞り、ゲノムワイド関連解析や遺伝子群の同定について、共同研究者と共同して遅れた部分を取り戻すよう研究を進める。
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