研究課題/領域番号 |
22H02230
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
西田 翔 佐賀大学, 農学部, 准教授 (40647781)
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研究分担者 |
辻田 忠志 佐賀大学, 農学部, 准教授 (20622046)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | カリウム / 選択的スプライシング / シロイヌナズナ / 無機栄養 |
研究実績の概要 |
代表者らはこれまでに、シロイヌナズナにおいて低カリウム耐性に必須な役割を担う転写因子MYB59が、低カリウム条件下において選択的スプライシング制御を介して発現誘導され、これにより様々な植物の低K応答が引き起こされることを明らかにしてきた。本研究では、MYB59における選択的スプライシング制御に関わる遺伝子を同定し、植物の栄養応答におけるmRNA配列調節の分子機構を初めて明らかにすることにある。 (1)昨年度に実施した728系統のシロイヌナズナトランスクリプトームデータを用いたGWASにより、MYB59のスプライシングパターンとの関連が検出されたProtein Kineaseの機能を調査するために、変異体の詳細な解析を実施した。その結果、この遺伝子変異が与えるMYB59のスプライシングパターンへの影響は極めて小さく、低K耐性やK集積性への影響も認められなかった。このことから、当該遺伝子のMYB59のスプライシング制御への関与は小さいと結論付けた。そこで、728系統を遺伝的背景にもとづいた9種類のサブグループに分け、サブグループごとにGWASを実施した。その結果、3つのサブグループで複数の有意なピークが検出され、そのうちの一つはRNA結合タンパク質をコードする遺伝子上に座乗していた。当該遺伝子はヒトにおいてスプライシング制御に関わることが知られており、MYB59のスプライシング制御因子の有力候補であると考えられた。 (2)31系統のシロイヌナズナの-K条件と+K条件におけるMYB59のスプライシングパターンを実験的に調査した。その結果、-KにおけるMYB59のスプライシングパターンの系統間差は小さく、一方+Kにおいて大きな系統間差が認められた。この結果から、+KにおけるMYB59のスプライシング抑制に関わる遺伝子に多様性があることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度実施したサブグループにおけるGWASにより、MYB59のスプライシング制御に関わることが強く予想される新規遺伝子が複数同定され、その中にはスプライシング制御に関わることが予想されるRNA結合タンパク質遺伝子が含まれていたことから、MYB59のスプライシング制御因子としての最有力候補として期待できる。さらに、今年度新たに実施したMYB59のスプライシングパターンの系統間差調査により、+Kで強くMYB59が抑制される系統を同定し、この系統を用いた遺伝学解析によりMYB59のスプライシング制御因子の同定が強く期待できる。同時に進めている変異体スクリーニングとも合わせて、本研究の最大の目標であるMYB59のスプライシング制御因子の同定に近づいていると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
(1)GWASにおいてMYB59のスプライシングパターンと関連する多型を有する遺伝子について、遺伝子ノックアウト植物を入手または作成し、MYB59のスプライシングパターンを調査する。 (2)特異的なMYB59のスプライシングパターンを示した系統と実験系統を用いた遺伝学解析により、MYB59のスプライシングパターンの違いに関わる遺伝子座を同定し、MYB59のスプライシング制御遺伝子候補を見出すことを目指す。 (3)現在進行中のFLUCリポータースクリーニングにおける課題を解決するために、翻訳エンハンサーを活用した強化型スプライシングレポーターを開発し、MYB59のスプライシングに異常を示す変異体のスクリーニングの効率化を目指す。 以上に加えて、いくつかの情報学解析により得られたMYB59制御因子候補の変異体を入手し、MYB59のスプライシングパターンを調査することで、MYB59のスプライシング制御との関係を調査する。
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