研究課題/領域番号 |
22H02248
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
高野 英晃 日本大学, 生物資源科学部, 准教授 (50385994)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 光センサー / 放線菌 / 組換えタンパク質生産 / ファージRNAポリメラーゼ |
研究実績の概要 |
放線菌Streptomyces griseusをホストとして、ビタミンB12型光センサーLitRを応用した組換えタンパク質の光誘導型大量生産系プロトタイプの構築に成功し、LiEX(Light inducible Expression)システムと命名した。 1. プラスミド型LiEXシステム(pLiEX) 放線菌由来のpIJ101型マルチコピープラスミドにLitRとσ因子LitSを導入したプラスミドpLit19を構築し、レポーター酵素β-グルクロニダーゼ(GUS)活性を指標として機能を評価したところ、光照射時においてのみ極めて高いGUS活性が確認された。細胞内における発現量を解析したところ、細胞内で最も生産量の高いタンパク質として検出されたことから、光誘導型プラスミドの構築に成功した。また、ホストの検討を行ったが、S. griseusで非常によく機能する一方で、S. lividansなどの他の放線菌では機能しなかったが、その理由は不明である。 2. ゲノム組込み型LiEXシステム(iLiEX) 光スイッチLitRSとT7RNAポリメラーゼを連結してゲノム上に組み込んだところ、光スイッチLitRS単独の場合と比較して、転写レベルを500~1000倍に増幅できることを見出した。これはT7RNAポリメラーゼが効率よくT7プロモーターからの転写を行ったことが原因と考えられる。上記のプラスミド型と異なって、ゲノム上に組み込むため、ゲノム上における高い保持性、シングルコピーのためコピー数効果による二次的効果の可能性排除など複数の利点を有している。また、ファージインテグラーゼを用いたゲノム組込みベクターは、大腸菌からの接合伝達によって極めて高効率・簡便にDNAを導入できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1. プラスミド型LiEXシステム(pLiEX) 放線菌マルチコピープラスミドをベースとする光誘導型プラスミドが非常によく機能することを確認した。また、種々のタンパク質を発現させたところ、細胞内・細胞外ともに高い確率で高生産に成功し、分泌酵素では産業利用されているトランスグルタミナーゼやラッカーゼに大量生産に成功している。その一方で、ホストの検討を行ったが、S. griseusなど一部の株でのみ機能し、S.lividansでは機能しなかったことから、今後この問題を解決する必要がある。 2. ゲノム組込み型LiEXシステム(iLiEX) 光スイッチLitRSとT7RNAポリメラーゼを組み合わせたところ、予想以上に高い500~1000倍の転写増幅がみられた。こちらについても細胞内・細胞外ともに高い確率で高生産に成功した。また、ホストの検討を行ったところ、S. griseusだけではなく、S.lividansでも機能したことから、放線菌で広く使える生産系であると考えれる。さらに、T7RNAポリメラーゼとは異なるプロモーター認識をするファージRNAポリメラーゼを探索し、5種類のポリメラーゼを見出した。
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今後の研究の推進方策 |
1. プラスミド型LiEXシステム 高コピープラスミド型が機能するホストを探索する。光アンテナ分子として機能するビタミンB12の生産能が、プラスミドタイプの光誘導に影響を及ぼしていると考えられることからB12生産性を解析する。また、これまでに20種類以上の放線菌マルチコピープラスミドをゲノム情報をもとに見出していることから、それらを用いて発現出力レベルの異なるベクターを開発する。また、放線菌制限-修飾系について、S. griseusのゲノムメチル化酵素とそのホモログを中心に解析する。予備実験によってStreptomyces属細菌の50%程度に共通するメチル化酵素を見出しており、いまだに謎となっている制限-修飾系を明らかにできる可能性が高い。 2. ゲノム組込み型LiEXシステム 1細胞において複数の刺激によって複雑かつ精密に制御できるシステムを開発する。T7RNAポリメラーゼは良く解析されており、1アミノ酸置換によってプロモーター認識を厳密にさせたSpecialist T7RNAポリメラーゼが報告されている。予備解析によって、放線菌においてもSpecialist型が機能することを確認しているが、大腸菌の知見とは異なり、プロモーター認識特異性はより高いものであった。そこで、蛍光タンパク質mScarlet-Iの発現を指標として、放線菌で機能するSpecialist型が認識するプロモーター配列を同定する。これまでに放線菌で機能するファージRNAポリメラーゼを5種類見出していることから、それらはプロモーター認識がT7RNAポリメラーゼとは異なるかを調べる。また、それら5種は転写増幅活性が100倍程度であり、T7RNAポリメラーゼに比べてその能力は低い。そこで、ファージゲノム上のプロモーター群を解析することによって、T7RNAPと同レベルのものを探索する。
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