研究課題/領域番号 |
22H02249
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
上田 賢志 日本大学, 生物資源科学部, 教授 (00277401)
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研究分担者 |
西山 辰也 日本大学, 生物資源科学部, 助教 (10759541)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | microaerophiles / capnophiles / cytochrome oxidase / carbon dioxide / gram-positive bacteria |
研究実績の概要 |
Symbiobacterium属に近縁で、現在の分類体系でBacillota門Clostridia科に含められている’Caldinitratiruptor microaerophilus’ JCM16183株のPacBioを用いた全ゲノム解読を実施した。その結果、環状の3.6 Mb完全長の解読に成功した。それによって、予想通り、高いGC含量(71%)を示すとともに、シトクロムオキシダーゼの全てのドメインをコードする遺伝子を保有していることを明らかにした。一方、キノールオキシダーゼをコードする遺伝子は存在しなかった。また、カタラーゼに相同性を示すタンパク質をコードする遺伝子も保有していないことが判明した。 本菌を嫌気条件で培養した菌体を用いた酸素消費活性検定では、低レベルながら電子供与体TMPDの添加によって酸素の消費が観測され、それがアジ化ナトリウムの添加で抑制されることが見いだされた。また、同菌体から超音波破砕と超遠心によって調製した膜画分を用いた検定によって、主要なヘムがbタイプであることが確認された。 微好気性を示す高温細菌の探索では、蛎殻を分離源としてC. microaerophilusの培養に用いる最小培地を用いたスクリーニングを実施した。その結果、好気条件に比べて微好気条件での増殖度が高い菌株が複数得られた。16S rRNA遺伝子配列に基づいた系統解析によって、それらはいずれもAnoxybacillus属に属する細菌株であることが明らかになった。これらの株は植え継ぎを繰り返すことで、微好気条件での増殖度が顕著に低下し、逆に好気条件で良好な増殖を示すようになった。この現象は、同属の分離株において過去にも類似の報告があった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
C. microaerophilusについては、その培養における増殖の不安定性のために、培養曲線をはじめとする基礎データの収集に時間を要した。現在も、その凍結保存の条件などにおいて安定性を欠いている側面があり、その解決に努める必要がある。探索においては、当初の目的とした系統位置を示す菌の取得に至っていない。分離源や分離条件が適切に設定できていないことが原因の一つと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
C. microaerophilusについて、その安定な培養条件の確定を急ぎ、基礎データを収集する。同時に、すでに活性を観測しているシトクロムオキシダーゼ活性について、その培養条件依存性を検証する。また、RT-PCR法を用いて遺伝子の発現レベルも定量し、その条件依存性を検証する。 類縁菌の探索は、引きつづき蛎殻を中心とする海洋性試料を主な分離源として、培地に完全培地も加えることで分離数を増やす。微好気で増殖を示す菌を優先的に分子系統解析に供し、目的の菌が得られた場合は直ちにゲノム解読を実施、さらにC. microaerophilusと同様の呼吸活性とその遺伝子発現の検定を行う。
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