研究実績の概要 |
我々の発見した植物の時計周期延長化合物BML-259は、サイクリン依存性キナーゼC(CDKC;1およびCDKC;2)のリン酸化活性を阻害する。CDKCは基本転写因子RNA Polymerase IIのC末端リピートをリン酸化し、転写活性を制御している。BML-259の処理は、時計関連遺伝子を含む多くの遺伝子の発現を抑圧する。このBML-259の構造活性相関研究から、より活性の強い低分子化合物TT369を見出した。しかし、以前報告した動物のCDKを用いた結合モデル(Uehara et al., Plant Cell Physiol., 2022)では、TT369の強い活性の理由を説明できなかった。そこで、新たにシロイナズナのCDKC;2の構造をホモロジーモデリングで構築し、TT369やBML-259との結合を統計的に検討することとした。その結果、TT369はBML-259よりも、安定的にCDKC;2に結合することが示唆された(Saito, Maeda, Takahara et al., Plant Cell Physiol., 2022)。 時計関連転写因子のPRR7の安定性に影響を与える低分子化合物を見出している。また植物体内でPRR7に相互作用するタンパク質を複数同定することができた。In silico解析から、低分子化合物はPRR7タンパクに結合する可能性は極めて低いと示唆された。 植物の時計を調節する、もしくは影響を与える低分子化合物や、その化合物の作用機序についての総説を発表した(Nakamichi et al., New Phytologist, 2022)。時計関連遺伝子の変異が、穀物の栽培地域の拡大に貢献したという知見を取りまとめた総説を発表した(Maeda and Nakamichi, Plant Physiology, 2022)。
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