研究課題/領域番号 |
22H02255
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
中道 範人 名古屋大学, 生命農学研究科, 教授 (90513440)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 植物 / 概日時計 / 化合物 / タンパク質の安定性 |
研究実績の概要 |
時計周期延長化合物の1つの作用機序の解析に取り組んだ。この化合物は25マイクロMの処理によって時計周期を長周期化するが、50マイクロMで毒性を示し始める。なお、これまで時計周期が長くなった変異体、また概日リズムが消失する変異体は、致死となることはない。このことは、化合物の標的は、概日時計以外に、生育に必須なシステムにも存在することが示唆された。すなわち、化合物の直接的な標的分子を同定しても、生存に必須なタンパク質で時計に関連のないものが取得されることが予想された。そこで、化合物を処理したのちの時計遺伝子の発現解析、遺伝子発現プロファイリングによって、時計調節のための標的を絞り込むことにした。化合物を処理すると、明け方ピークのCCA1の発現が上昇したが、午前中ピークのPRR7、夕方ピークのTOC1の発現レベルに対しては強い影響は出なかった。CCA1の転写制御に関わるPRRファミリーのタンパク質に対する化合物の影響を検討したところ、化合物はPRR7タンパクの量を低下させることが分かった。一方、PRR9、PRR5、TOC1(PRR1)タンパク質の量的な変化への化合物の影響は小さかった。PRR7タンパク質には、PRドメインという領域が存在し、これは暗闇依存的なタンパク質分解に関わるcis領域として知られていた。そこでPRドメインを削ったPRR7タンパクに対する化合物の影響を確かめたところ、このタンパク質に対しては化合物の影響はほぼなくなることがわかった。最後にprr7変異体での、化合物依存的なCCA1誘導活性を検討したところ、prr7では化合物感受性が極端に低くなっていた。本化合物は、PRR7タンパクの安定性を介して、CCA1発現や周期延長に影響を与えることが示唆された (Uehara et al., Plant Cell Physiol. 2023)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
過去の文献から予想されていたPRR7の分解システムが、我々の見出していた化合物を起点とする研究によって明らかになりつつある。化合物を起点としたアプローチの他に、植物体内でのPRR7の相互作用因子の探索も行っている。PRR7相互作用因子の中には、分解に関わるタンパク質も含まれており、この解析を進めることでPRR7の分解システムが明らかになると期待される。
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今後の研究の推進方策 |
PRR7の分解経路を明らかにするために、PRR7の相互作用因子の解析を行う。相互作用因子の変異体をゲノム編集によって作出し、その変異体でのPRR7タンパク質の量的な変化を解析する。またPRR7タンパク質の安定性は光環境によって変化することが知られているため、光量や光質がPRR7の安定性に影響を与える検討をはじめ、さらにこの変化が変異体でどの程度認められるかを解析する。取得した変異体の時計の形質も多角的な解析で明らかにする。
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