研究課題/領域番号 |
22H02256
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
北島 健 名古屋大学, 生物機能開発利用研究センター, 教授 (80192558)
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研究分担者 |
佐藤 ちひろ 名古屋大学, 生命農学研究科, 教授 (10343211)
呉 迪 名古屋大学, 生物機能開発利用研究センター, 助教 (10817547)
羽根 正弥 名古屋大学, 生命農学研究科, 助教 (70853331)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 硫酸化シアル酸 / 硫酸転移酵素 / 遺伝子改変動物 / 脊椎動物 / シアル酸 |
研究実績の概要 |
シアル酸の硫酸化の生物学的意義の解明を目指し、2022年度は次の2項目を行った。(i) SulT-Sia1およびSulT-Sia2 遺伝子欠損動物の表現型の解析: まず、これら2種類の遺伝子欠損 (KO) メダカが必ずしも致死とならないことが判明した。飼育環境を整えると野生型(WT)とKOメダカとの生存率に差が無くなったことから、やはり樹立KOメダカは致死ではないことが判明した。しかしKOメダカは樹立当初、致死性が高く、2-3世代継代後に致死性が消失したことから、その間に何らかの致死性回避の遺伝的変化が起こったと考えられる。一方、KOメダカは受精後孵化までの発達段階において違いが観察された。次に、遺伝子改変マウスでは、遅れていたSulT-Sia1とSulT-Sia2のKOマウスが樹立できた。KOマウス自は誕生し成体まで生育することが判明した。(ii) 新奇シアル酸硫酸転移酵素の探索と同定、酵素の性質の比較検討: これまでにG418誘導性のSulT-Siaの探索を誘導前後におけるRNAseqデータ比較から行い、数種の候補酵素遺伝子を同定した。それらの酵素遺伝子を哺乳類CHO細胞で過剰発現させたが、酵素活性はなく方針変更が必要となった。そこで両酵素の分泌型酵素を哺乳類細胞で発現させて組換え体酵素を調製する実験系の樹立をおこない、組換え体酵素の取得が可能になった。次に、SulT-Sia1およびSulT-Sia2-KOメダカにおいて、各臓器のシアローム解析を行った。その結果、特定の臓器において硫酸化シアル酸が現状することを見出した。また、SulT-Sia1/Sia2-DKOメダカでも酸化シアル酸が検出される臓器を特定することを端緒に酵素同定を行う事俊、安定なDKOメダカの樹立を現在何度か試行している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
(i) SulT-Sia1およびSulT-Sia2 遺伝子欠損動物の表現型の解析: まず、遺伝子改変メダカについては、これまでにSulT-Sia1とSulT-Sia2の欠損 (KO) メダカが必ずしも致死ではないことが判明した。また、継代を重ねると、致死とならない傾向がより顕著になった。その原因は不明であるが、ミスターゲットが起こった可能性や、メダカの飼育環境が悪かった可能性が考えられた。そこでメダカ飼育環境を整えて表現型の解析を進めたところ、KO系列のまま継代しても遺伝子型は全く変化することなく、致死性が消失することがわかった。継代の間に何らかの致死性回避する遺伝的変化が起こったと考えられる。次に、遺伝子改変マウスについては、昨年度完成予定であったSulT-Sia1とSulT-Sia2のKOマウスを作出することができた。RNAseqの結果からSulT-Sia2の発現が脳に限局されていることがわかり、脳内の主要タンパク質でポリシアル酸構造をもつ神経細胞接着分子NCAM上において硫酸化シアル酸の存在が疑われた。そこでNCAM-KOに着目し、継代可能なKOマウスの樹立ができた。(ii) 新奇シアル酸硫酸転移酵素の探索と同定、酵素の性質の比較検討: これまでにG418誘導性のSulT-Siaの探索を行い、誘導前後におけるRNAseqデータの比較から数種の候補酵素遺伝子が判明した。しかし、それらのcDNAを哺乳類CHO細胞に過剰発現させても、硫酸化シアル酸の発現は増加しなかった。そこで2022度では、SulT-Sia1/Sia2-DKOメダカを作出して、依然として硫酸化シアル酸が検出される臓器を特定しようとしたが、DKOメダカの樹立は現在までできていない。一方、両酵素を安定して哺乳類細胞で発現して組換え体酵素を調製する実験系の樹立を試み、分泌酵素の調製にほぼ成功した。
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今後の研究の推進方策 |
(i) SulT-Sia1およびSulT-Sia2 遺伝子欠損動物の表現型の解析について: まず、SulT-Sia1およびSulT-Sia2 遺伝子欠損(KO)メダカにおいては、両者ともに受精後孵化までの発達段階において異常が観察されており、まずはこの表現型の特定を目指した。両KOメダカは孵化遅延の傾向があり、精子ではなく卵のもつ因子が関与することも判明してきている。そこで、母性因子の特定を行い、その後、形態学的観察および生化学的解析を行うことによって母性因子を特定する。次に、SulT-Sia1とSulT-Sia2のKOマウスについては、誕生後成体まで生存の観点からは異常が見つからなかったため、各臓器のシアローム解析やRNAseq解析がおこなえるように、KOマウスの系統を樹立する。また、両遺伝子のDKOマウスの樹立を行い、表現型やシアローム解析を行う予定である。さらに、メダカとの比較から、雌性配偶子に対する影響が顕著である可能性があるため、卵の形態観察や生化学的解析を試みる。(ii) 新奇シアル酸硫酸転移酵素の探索と同定、酵素の性質の比較検討について: これまでの研究から、硫酸化シアル酸を生合成する酵素は、SulT-Sia1およびSulT-Sia2以外にも存在することが明らかであり、その同定を目指す。その前段階として、硫酸転移酵素の組換え体酵素を用いて、基質特異性などの性質を解明する実験を行う
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