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2023 年度 実績報告書

善玉コレステロール形成反応の分子機構解明

研究課題

研究課題/領域番号 22H02258
配分区分補助金
研究機関京都大学

研究代表者

木村 泰久  京都大学, 農学研究科, 准教授 (10415143)

研究分担者 安部 真人  愛媛大学, 農学研究科, 准教授 (30543425)
研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2026-03-31
キーワード善玉コレステロール / HDL / 高密度リポタンパク質 / コレステロール / ABCA1 / ABCタンパク質 / 膜輸送体
研究実績の概要

高密度リポタンパク質(HDLは)末梢で余剰となったコレステロールを肝臓へと輸送する唯一の経路であり、血中量や産生量が動脈硬化症の発症と負に相関することから、善玉コレステロールとして広く知られている。HDLはATP依存的な能動輸送体(ABCA1)によって産生されるが、その詳細は不明である。2023年度の研究では、ABCA1によるHDL形成が膜脂質の一種、ホスファチジルセリン(PS)依存的であり、コレステロールを選択的に輸送していることを明らかにした(Sakata. J. Biochem)。
ABCA1がHDLを形成する際にどのような脂質を輸送するのかは不明であったが、本研究によってABCA1は実際にコレステロールを輸送基質として認識し、積極的に輸送している事が明らかとなった。本成果はHDL形成反応の詳細を解き明かした研究であり、重要な知見である。
本研究ではABCA1をヒト培養細胞に発現させ、高品質の精製標品を取得した。精製ヒトABCA1を人工リン脂質膜(リポソーム)に再構成し、ATP加水分解活性を指標に様々な脂質の影響を解析した。その結果、ABCA1の活性には負電荷をもつリン脂質が必須であり、負電荷脂質非存在下では、ほぼ活性を示さないことが明らかとなった。さらに負電荷脂質存在下でのみコレステロールによって活性が上昇することが明らかとなった。細胞に存在する負電荷脂質は主にPSであることから、PSを中心に検討を行った結果、アシル鎖に対する選択性はほぼないと考えられた。また、ステロールに対する特性を評価した結果、ABCA1は植物性ステロールを輸送基質として認識しないことが示唆された。
天然型リン脂質では構造に限りがあるため、共同研究者が合成したユニークなPSを用いて活性制御に重要な化学構造の比較検討を実施している。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究はおおむね順調に進行している。研究2年度目ではABCA1の活性がホスファチジルセリン依存的であることを明らかにし、論文発表を行った。また、様々な種類のABCタンパク質が輸送する脂質を網羅的に解析する技術の開発に成功し、ABCタンパク質の一部が脂溶性ビタミンの一部を輸送する可能性を明らかにすることができた(藤村 第46回 日本分子生物学会年会)。本研究年度では目標通りABCA1によるHDL形成機構の詳細を明らかにしたことに加え、汎用的な解析系の開発に成功したことから、進捗は順調である。

今後の研究の推進方策

今後は研究分担者が合成する非天然型脂質を用い、PSによるABCA1の活性制御機構についてさらに詳細に解析する予定である。また、HDL合成反応の人工再現に取り組む計画である。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2024 2023

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (5件)

  • [雑誌論文] The ATPase activity of ABCA1 is increased by cholesterol in the presence of anionic lipids2024

    • 著者名/発表者名
      Kazuki Sakata, Noriyuki Kioka, Kazumitsu Ueda, Yasuhisa Kimura
    • 雑誌名

      The Journal of Biochemistry

      巻: Online ahead of print. ページ: 1-11

    • DOI

      10.1093/jb/mvae003

    • 査読あり
  • [学会発表] 合成脂質を用いたヒトABCA1の活性調節機構の解析2024

    • 著者名/発表者名
      師岡 はるか、藤原 朋哉、安部 真人、三澤 嘉久、馬場 直道、木岡 紀幸、木村 泰久
    • 学会等名
      農芸化学会 2024大会
  • [学会発表] ヒトABCタンパク質による脂質、 脂溶性ビタミン輸送能評価系の開発2024

    • 著者名/発表者名
      木村泰久、藤村大河、木岡紀幸
    • 学会等名
      農芸化学会 2024大会
  • [学会発表] ABCA1のコレステロール認識におけるリン脂質特異性の解析2023

    • 著者名/発表者名
      坂田和樹、木岡紀幸、植田和光、木村泰久
    • 学会等名
      第65回日本脂質生化学会
  • [学会発表] 脂質・脂溶性ビタミン分析系を用いたヒトABCタンパク質の輸送基質同時解析2023

    • 著者名/発表者名
      藤村大河、木岡紀幸、木村泰久
    • 学会等名
      第46回 日本分子生物学会年会
  • [学会発表] ヒトABCG4による脂質認識機構の解析2023

    • 著者名/発表者名
      田原基明、木岡紀幸、植田和光、木村泰久
    • 学会等名
      第46回 日本分子生物学会年会

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公開日: 2024-12-25  

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