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2023 年度 実績報告書

根寄生雑草防除の鍵となるストリゴラクトン生合成酵素の解明

研究課題

研究課題/領域番号 22H02269
配分区分補助金
研究機関宇都宮大学

研究代表者

野村 崇人  宇都宮大学, バイオサイエンス教育研究センター, 准教授 (60373346)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2026-03-31
キーワードストリゴラクトン / 生合成 / 根寄生雑草
研究実績の概要

ストライガ(Striga)やオロバンキ(Orobanche)といった根寄生植物は、他の植物の根に寄生して栄養や水分を奪うため、世界各地の農作物に甚大な被害を与えている。現在までに根寄生雑草の有効な防除法は確立されていない。根寄生雑草の種子は植物の根から分泌されるストリゴラクトン(SL)と呼ばれる化合物を認識して発芽する。SLはアーバスキュラー菌根菌との共生や植物の枝分かれも制御している。これまでに、ストライガ耐性品種として育種により作出されたソルガム(Sorghum bicolor)から、その耐性を付与した原因遺伝子LOW GERMINATION STIMULANT 1 (LGS1)が同定されている。LGS1遺伝子は立体特異的なSLの環化反応に関わる生合成酵素をコードしていると考えられるが、その機能は解明されていなかった。本研究では、根寄生雑草の防除法の開発基盤となりうるLGS1酵素によるSL生合成経路を明らかにすることを目的としている。
本年度は、ソルガムにおいてLGS1遺伝子と共発現している遺伝子を候補として選び、それにコードされる2-オキソグルタル酸依存性ジオキシゲナーゼSobic.005G213500 (Sb3500)の機能の解析を進めた。その結果、酵母や大腸菌を用いた発現系や、ベンサミアナタバコ(Nicotiana benthamiana)による一過的発現系により、Sb3500はLGS1と一緒に発現させたときに5DSを選択的に合成する機能をもつことを明らかにした。これらの研究成果について論文や学会で発表した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

これまでの研究において、大腸菌で発現させたLGS1タンパク質とSLの前駆物質の一つである18-hydroxycarlactonoic acid(18-OH-CLA)をインキュベートしたところ、ソルガムの主要なSLである5-deoxystrigol(5DS)の生産が確認された。しかし、同時にその立体異性体の4-deoxyorobanchol(4DO)も検出された(Yoda et al., New Phytol., 232: 1999-2010, 2021)。LGS1遺伝子は硫酸基転位酵素をコードしており、18-OH-CLAの水酸基に硫酸基が付加して脱離し、酵素非依存的にC環の環化が進んだと考えられた。4DOはソルガムからは検出されないので、5DSだけを生産する生合成経路にはもう一つ、C環の立体を決める酵素が必要であると考えられた。そして、ソルガムにおいてLGS1遺伝子と共発現している遺伝子を候補として選び、それにコードされる2-オキソグルタル酸依存性ジオキシゲナーゼSb3500の機能の解析を進めた。その結果、酵母や大腸菌を用いた発現系や、ベンサミアナタバコによる一過的発現系により、Sb3500はLGS1と一緒に発現させたときに5DSを選択的に合成する機能をもつことを明らかにした(Yoda et al., Plant Cell Physiol., 64: 1034-1045, 2023)。

今後の研究の推進方策

Sb3500がどのように5DSの立体特異的な生合成を制御しているのかは、酸化酵素であるという機能からは直接的な証明ができていない。そこで今後は、ソルガムのSL生合成経路の全貌を明らかにするため、ソルルガムが持つ機能未知のSL生合成酵素の機能解析を進める。その酵素はSb3500と一緒にSL生合成酵素の候補として選んだものの中の一つであり、SL前駆体を未知の代謝物へ変換する機能を持つことを確認している。他の植物種のホモログタンパク質の解析も進めて、その機能が保存されているのかを調べる。そのため、酵母や大腸菌を用いた発現系やベンサミアナタバコによる一過的発現系を用いて解析する。代謝物の分析はLC-MS/MSを用いて行う。もし、それらのタンパク質がSL生合成酵素として機能しているようであれば、ゲノム編集によりシロイヌナズナやトマトの機能欠失変異体の作出を進める。

  • 研究成果

    (13件)

すべて 2024 2023 その他

すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 4件)

  • [国際共同研究] カリフォルニア大学リバーサード校(米国)

    • 国名
      米国
    • 外国機関名
      カリフォルニア大学リバーサード校
  • [国際共同研究] シドニー大学(オーストラリア)

    • 国名
      オーストラリア
    • 外国機関名
      シドニー大学
  • [雑誌論文] A Stereoselective Strigolactone Biosynthesis Catalyzed by a 2-Oxoglutarate-Dependent Dioxygenase in Sorghum2023

    • 著者名/発表者名
      Yoda Akiyoshi、Xie Xiaonan、Yoneyama Kaori、Miura Kenji、McErlean Christopher S P、Nomura Takahito
    • 雑誌名

      Plant And Cell Physiology

      巻: 64 ページ: 1034~1045

    • DOI

      10.1093/pcp/pcad060

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Identification of a Prunus MAX1 homolog as a unique strigol synthase2023

    • 著者名/発表者名
      Wu Sheng、Zhou Anqi、Hiugano Kozue、Yoda Akiyoshi、Xie Xiaonan、Yamane Kenji、Miura Kenji、Nomura Takahito、Li Yanran
    • 雑誌名

      New Phytologist

      巻: 239 ページ: 1819~1833

    • DOI

      10.1111/nph.19052

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] ストリゴラクトン研究の新しい展開, はじめに2023

    • 著者名/発表者名
      野村崇人
    • 雑誌名

      植物の生長調節

      巻: 58 ページ: 78-79

  • [雑誌論文] 植物特化代謝物の生合成研究, 植物細胞を利用した有用タンパク質の高生産2023

    • 著者名/発表者名
      野村崇人
    • 雑誌名

      アグリバイオ

      巻: 7 ページ: 36-40

  • [学会発表] 根寄生植物Orobanche minorのストリゴラクトン生合成の解析2024

    • 著者名/発表者名
      川渕 真優、深沢 嘉紀、謝 肖男、瀬戸 義哉、野村 崇人
    • 学会等名
      第65回日本植物生理学会
  • [学会発表] 根寄生植物ヤセウツボのストリゴラクトン生合成酵素の解析2023

    • 著者名/発表者名
      川渕 真優、深沢 嘉紀、瀬戸 義哉、謝 肖男、野村 崇人
    • 学会等名
      植物化学調節学会第57回大会
  • [学会発表] テルペノイド系植物ホルモン生合成経路におけるシトクロムP450の機能解析に関する研究2023

    • 著者名/発表者名
      野村 崇人
    • 学会等名
      植物化学調節学会第57回大会
  • [学会発表] Strigolactone biosynthesis in Arabidopsis and bryophytes2023

    • 著者名/発表者名
      Kozue Hiugano, Xiaonan Xie, Masaki Shimamura, Takahito Nomura
    • 学会等名
      第33回国際シロイヌナズナ研究会議
    • 国際学会
  • [学会発表] Steps catalyzed by unknown enzyme in brassinosteroid biosynthesis2023

    • 著者名/発表者名
      Rikuto Hamada, Akira Yata, Sae Sumiya, Toshiyuki Ohnishi, Kenji Miura, Takahito Nomura
    • 学会等名
      第33回国際シロイヌナズナ研究会議
    • 国際学会
  • [学会発表] Strigolactone biosynthesis in mosses2023

    • 著者名/発表者名
      Kozue Hiugano, Xiaonan Xie, Masaki Shimamura, Takahito Nomura
    • 学会等名
      第24回国際植物生長物質会議
    • 国際学会
  • [学会発表] Brassinosteroid biosynthetic pathway has yet to be fully elucidated2023

    • 著者名/発表者名
      Rikuto Hamada, Akira Yata, Sae Sumiya, Toshiyuki Ohnishi, Kenji Miura, Takahito Nomura
    • 学会等名
      第24回国際植物生長物質会議
    • 国際学会

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公開日: 2024-12-25  

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