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2022 年度 実績報告書

ペクチンが小腸を構成する細胞と相互作用する分子メカニズムの解明

研究課題

研究課題/領域番号 22H02285
配分区分補助金
研究機関岐阜大学

研究代表者

矢部 富雄  岐阜大学, 応用生物科学部, 教授 (70356260)

研究分担者 志水 元亨  名城大学, 農学部, 准教授 (20423535)
研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2026-03-31
キーワードペクチン / フィブロネクチン / 食物繊維 / 分子間相互作用 / カルシウム
研究実績の概要

水溶性食物繊維であるペクチンは,陸生植物の細胞壁を構成する必須の成分でもある。そこで,プルーン,アップル,レモン,シュガービート,オレンジ,カキ,ユズといった各種の植物からペクチンをオートクレーブを用いて熱水抽出し,DEAEセルロース陰イオン交換カラムを用いてペクチンを精製した後,主鎖の主成分であるガラクツロン酸を酵素により分解してそれぞれのペクチン側鎖を得た。この側鎖に対してTFAによる酸加水分解を行った後,HPLCにより側鎖構造を構成する糖組成を分析した。その結果,側鎖の分岐点となるラムノースと主要な構成糖であるガラクトース(Gal)およびアラビノース(Ara)のそれぞれの存在比から,Gal/Araを算出したところ,Gal比の高いペクチンとAra比の高いペクチンに分類されることを明らかにした。続いて,小腸上皮細胞が分泌するフィブロネクチンとそれぞれのペクチン側鎖との相互作用解析を行ったところ,結合力の強さとGal/Ara比に基づく構成糖比との相関は見られなかった。一方,側鎖のみではなくペクチン分子全体を用いたフィブロネクチンとの相互作用分析では,いずれのペクチンについても類似した結合力が示されたことから,ペクチン分子中の特定の主鎖構造がフィブロネクチンとの相互作用に関与している可能性が示唆された。そこで,主鎖構造のメトキシ化度(DM)を分析した結果,DMが高いほどペクチンとフィブロネクチンとの結合力が強まり,DMが低くなれば結合力が弱まることを見出した。さらに,メトキシ化されていないガラクツロン酸がカルシウムを抱合することによって,両者の結合力は変わらないものの,フィブロネクチンに対するペクチンの結合量が増加することを見出した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

本研究課題の計画当初は,摂取した水溶性食物繊維のペクチンが小腸において生理機能に関与する際のターゲットとなる腸管上皮細胞由来のフィブロネクチンと相互作用する際に,ペクチン分子中の側鎖構造が重要な役割を果たしていると想定しており,それゆえに様々な植物種から得られたペクチンの側鎖構造に着目してその構造の特徴の同定を試みた。側鎖構造に関しては,予想通り植物種により大きく異なることが明らかとなったものの,フィブロネクチンとの相互作用については構造との相関関係を見出すことが出来なかった。しかしながら,側鎖構造のみではなく,主鎖であるポリガラクツロナンを含めたペクチン分子全体を対象としてフィブロネクチンとの相互作用をさらに解析したところ,結合には側鎖構造ではなく主鎖構造のメトキシ化の程度が大きく関与し,さらにカルシウムを抱合した状態で安定した結合を担っていることを明らかにした。この発見は,ペクチン分子を摂取した際の生理機能の発揮において,フィブロネクチンを介したペクチン分子による細胞へのシグナルの提示には植物種の相違が影響せず,その後の側鎖構造の違いを認識する別のタンパク質が存在することを示唆している。

今後の研究の推進方策

小腸を構成する細胞のうち,摂取した食物中のペクチンが直接接触する可能性が高い細胞である栄養吸収上皮細胞と粘膜固有層マクロファージ(LPMF)に注目し,これらの細胞のペクチンへの応答を指標として,ペクチン分子を認識する細胞表面タンパク質を明らかにする。これまでに,腸管上皮細胞が分泌するフィブロネクチンとの相互作用にはペクチン分子中の主鎖構造が主たるはたらきをすることを見出したが,フィブロネクチンを発現しないLPMFがペクチンに応答し,その強弱が植物種に因って異なる場合は,ペクチンの側鎖構造の相違がLPMFに存在するタンパク質との相互作用を決定している可能性が高い。そこで,LPMFがLPSによって刺激された際に炎症性サイトカインIL-6の分泌をペクチンが抑制する機能を利用して,研究分担者らによって発見・同定されたペクチン分解酵素を用いて分子構造限定的に分解し,どのような構造が消失した際に最もIL-6分泌抑制への影響が大きいかを検討する。これにより,LPMF細胞がペクチンを認識する際の多糖分子構造の同定を目指す。また,マクロファージ細胞から膜タンパク質を調製し,ペクチン分子と相互作用するタンパク質の同定を試み,そのタンパク質が同定された後には,ゲノム編集技術により標的タンパク質を欠損させて,ペクチン添加時の影響を確認することにより,ペクチンの小腸における生理機能発現メカニズムの解明をめざす。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2022

すべて 学会発表 (2件)

  • [学会発表] フィブロネクチンと相互作用するペクチンの構造的特徴の解析2022

    • 著者名/発表者名
      大平夏帆,北口公司,矢部富雄
    • 学会等名
      日本応用糖質科学会
  • [学会発表] 食物繊維ペクチンとフィブロネクチンの結合はカルシウムイオンによって調節される2022

    • 著者名/発表者名
      増田凌也,伊藤賢一,大野真貴,北口公司,矢部富雄
    • 学会等名
      日本応用糖質科学会

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公開日: 2023-12-25  

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