研究課題
深部体温には性差があり、男性の方が女性よりも低い。さらに、男性の長寿研究では、体温が低いことが長寿と関連することが報告されていることから、体温調節に注目して研究を行っている。前年度に、アンドロゲンがアンドロゲン受容体(AR)を介して雄性マウスの褐色脂肪における熱産生に抑制的に機能することについて明らかにした。さらにそのメカニズムとして、beta3-adrenoceptor/cAMP/PKA/CREB/CREシグナリングをARが抑制することを見出した。そこで今年度は、体温調節における性ホルモンの影響の雌雄差を明らかにするために、雌性マウスにおけるエストロゲンの影響を検討した。8週齢マウスの卵巣摘出(OVX)後、OVX群とOVX+E2群に分け、E2としてestradiol benoateを4日に1回投与を行い9週間飼育した。体温については、直腸、尾部、肩甲骨部の3か所を4日毎に測定を行った。E2の有効性については、解剖時に子宮重量の増加により確認した。直腸温については、E2による有意な減少が認められる時点もあったが、明瞭な差は認められなかった。尾部温については、概して、OVX後の飼育前半ではE2による低下が、飼育後半ではE2による増加が認めらえた。肩甲骨部についは測定したすべての時点でE2による上昇が認められ、統計的差は測定したおよそ3割の時点で認められた。雄性マウスでのアンドロゲンによる深部や表皮体温の明瞭な体温抑制作用とは異なり、OVXマウスにE2を投与する雌性マウスのエストロゲンによる影響は、深部体温への影響は明瞭でないが、肩甲骨部温の増加が認められた。これらの結果ら、雌性におけるエストロゲンの影響と、雄性におけるアンドロゲンで体温調節作用が異なる部位が存在することが判明した。
2: おおむね順調に進展している
雄性マウスのARノックアウトや去勢モデルで見出したアンドロゲンの体温調節作用と、雌性OVXマウスにE2投与で見出したエストロゲンの体温調節作用が同様でなかった。よって、体温調節における雄でのアンドロゲン作用と雌でのエストロゲン作用に性差が存在することが判明した。
ARによるbeta3-adrenoceptor/cAMP/PKA/CREB/CREシグナリング抑制作用が認められ、CREBとの複合体形成がこの要因となることが推測された。一方で、AR・CREBの複合体形成については、直接的なものか否か等、詳細については不明瞭であり、焦点を当てて明らかにする。さらに、PKA/CREB/CREシグナリングに対する他の核内受容体の影響についても検証する。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 1件、 招待講演 4件) 備考 (1件)
Sci. Rep.
巻: 14 ページ: 3244
10.1038/s41598-024-53380-x
日本栄養・食糧学会誌
巻: 76 ページ: 141-147
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https://www.omu.ac.jp/agri/nc/