研究課題
本研究は糖タンパク質型転写因子Nrf1による正と負のプロテアソーム制御機構を知ることを目的としている。正の制御機構としては、脱糖鎖酵素NGLY1によるアミノ酸編集に着目し、その詳細な機構の解析を行なっている。昨年度は、プロテアソーム転写誘導活性に必要なアミノ酸編集の部位を9箇所のN型糖鎖付加部位から1箇所に限定した。今年度はアミノ酸編集後のNrf1に特異的に結合するタンパク質の同定を行った。さらにその結合因子が同定した1箇所のアミノ酸編集された部位に結合することを見出した。すなわち、プロテアソームの転写が誘導されるためには、1箇所の糖鎖除去によるアミノ酸編集された部位に相互作用分子が結合することが必要であることが判明した。負の制御機構に関しては、糖鎖認識ユビキチンリガーゼSCFFBS2ともう一つのユビキチンリガーゼARIH1の2種類のユビキチンリガーゼの共同作業による型破りなユビキチン化によるNrf1の不活化機構について詳細な検討を行った。その結果、このユビキチン化は(1)NGLY1とは異なるもう一つの細胞質脱糖鎖酵素ENGASE活性に依存する反応であること、(2)セリン・スレオニン並びにN型糖鎖がトリミングされて生じるGlcNAcにエステル結合を介してユビキチン鎖がつくこと、(3)さらにそのユビキチン鎖は特徴的な分岐鎖であること、(4)このユビキチン鎖は細胞内の脱ユビキチン化酵素に対して耐性をもつなどの、極めてユニークな性質を持つことが判明した。このユビキチン化により、Nrf1のプロセシング酵素DDI2に耐性となり、核移行が阻害されることにより、Nrf1の機能阻害につながることを明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
非常に新奇性の高いユビキチン化によるNrf1の負の制御機構を明らかとし、さらにNrf1の正の制御機構についても詳細な機構が判明してきているため順調に進展している。
負の制御機構に関しては、異常なユビキチン化に加え、どのようにこのユビキチン化タンパク質がプロテアソーム活性を抑制するのかを明らかにする。正の制御機構については、プロテアソーム以外のタンパク質の発現誘導とどのように関わるのかについて発展させていく。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件、 招待講演 4件) 備考 (1件)
J Cell Biol .
巻: 223 ページ: e202306013
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Biochem Biophys Res Commun
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