研究課題/領域番号 |
22H02310
|
配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
土井 一行 名古屋大学, 生命農学研究科, 准教授 (80315134)
|
研究分担者 |
犬飼 義明 名古屋大学, 農学国際教育研究センター, 教授 (20377790)
西内 俊策 名古屋大学, 生命農学研究科, 助教 (30726980)
杉浦 大輔 名古屋大学, 生命農学研究科, 講師 (50713913)
槇原 大悟 名古屋大学, 農学国際教育研究センター, 准教授 (70452183)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
|
キーワード | イネ / 登熟 / 収量 |
研究実績の概要 |
ジャポニカ品種T65とインディカ品種DV85では、登熟時の茎葉重の変化や茎葉部に蓄積される非構造正炭水化物(NSC)の動態が大きく異なる。これまでに、これらの形質に関与する量的形質遺伝子座(QTL)を両系統の交雑に由来する組換え自殖系統で検出した(Phung et al. 2019)。本研究はこれらのQTLを均一な遺伝的背景をもつ染色体部分置換系統(TD-CSSL)で評価し、QTLの原因遺伝子単離を目指している。 TD-CSSLの形質評価の結果、精もみ収量に対して、シンク容量(すべての穎花が登熟した場合の収量)・充てん率(実際の玄米重/すべての穎花が登熟した場合の玄米重)・バイオマス(穂重+茎葉重)・種子稔性(登熟歩合)などに正の相関が見られた。また、シンク容量に対し、充てん率および種子稔性は負の相関を示した。充てん率と種子稔性の相関は高かった(R=0.76, p=0)。充てん率とバイオマス、充てん率と粗もみ重の間には相関がなかった。また、玄米の粒厚と充てん率には正の相関(R=0.51, P<0.001)があった。TD-CSSLの評価で計測に手間がかかる充てん率を評価するには、種子稔性や粒厚の測定が有用であることが明らかとなった。 また、TD-CSSLの遺伝子型をgenotyping by sequencingにより決定し、登熟期間中のNSC量や茎葉重の減少に関与する既報のQTL(Phung et al. 2019)との照合を行ったが、TD-CSSLに導入されたDV85由来の染色体領域との単純な一致は見られなかった。NSCについては解析途中であり、さらに検討を進める。 北陸193号が出穂期にNSCを茎葉部にT65よりも多く蓄積することを確認し、この原因となりうるQTLを染色体11に検出した。 材料の育成では、TD-CSSLからQTLのピラミディング系統の作出と高精度連鎖解析向けの分離集団の作出を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、T65と比較した場合のDV85の高いの充てん率に関与するQTLの候補として、出穂期のNSC蓄積に関与するqNSC1、登熟期の茎葉部のNSC減少に関与するqNSC2、登熟期の茎葉部の乾物重減少に関与するqSWTR11などの効果の確認を目的にTD-CSSLの形質評価を行っており、やや遅れ気味ではあるが、実験の進捗は順調である。また、NSC測定に関しては、従来の粉砕装置では処理速度・騒音の問題があり律速となっていたが、新たな方法を導入してスピードアップできた。また、交配によるピラミッド系統の作出やTD-CSSL由来の分離集団の作出も順調に行った。ただし、2022年の田植え時期の酷暑による活着不良でイネの成育が不均一となり、実験結果に影響があった可能性があり、一部で再度の実験を要する。
|
今後の研究の推進方策 |
NSCの動態に関しては、qSWTR11が導入されているCSSLで茎葉重の減少は顕著ではなかったが、出穂期の高NSC、登熟期のNSC減少が見られた。このことは、染色体11に登熟期間中のNSC動態に関与する遺伝子が存在することを示唆した。これについて、重点的に解析をすすめ、充てん率に影響があるかどうかを確認する。また、最終的な収穫期だけでは登熟能の評価は困難であることは明らかであり、登熟の途中である出穂20日後のサンプルを利用し、登熟・種子充てんの速度が評価できないかを検討する。この場合、単純な重さだけでなく、未熟粒の比率を穀粒判別機により測定するなど、より登熟の動態を詳細に調査する実験系を確立する必要がある。
|