研究課題/領域番号 |
22H02311
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
吉川 貴徳 京都大学, 農学研究科, 助教 (00721606)
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研究分担者 |
佐藤 豊 国立遺伝学研究所, ゲノム・進化研究系, 教授 (40345872)
松宮 健太郎 京都大学, 農学研究科, 准教授 (60553013)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | イネ / 貯蔵タンパク質 / GWAS / 加工機能性 / 野生イネ |
研究実績の概要 |
日本人が摂取するタンパク質の約11%は米(および加工品)に由来しており、米の貯蔵タンパク質はコムギやトウモロコシと比較してアミノ酸スコアが高く、栄養化学的観点からも米は実用的なタンパク源であると言える。これまでの取り組みで、栽培種と比較して在来種や野生種ではタンパク質含量が高かったことから、在来種や野生種にはタンパク質含量を向上させる遺伝資源が含まれていると考えられる。本研究はイネの種子貯蔵タンパク質含量を改変するための遺伝的要因を同定するとともにタンパク質の加工機能性を明らかにすることで、高タンパク質含量米の品種育成とその社会実装に向けた基盤整備を行うことを目的としている。 2022年度はイネの栽培化に伴って変化した遺伝的要因を捉えるため、japonica品種の祖先野生種(Or-IIIグループ)に加え、日本のイネコアコレクション(JRC)および世界のイネコアコレクション(WRC)を供試して種子貯蔵タンパク質含量に関するGWAS解析を実施した。その結果、タンパク質含量と有意な関連を示すQTLを複数同定することができた。タンパク質含量と粒重は弱い負の相関を示すものの、タンパク質含量に関するQTLは粒重のQTLとは別座であったことから、これらのQTLは粒重に影響を与えることなくタンパク質含量を改変できる可能性があると考えられた。イネの種子を粉砕して米粉にし、そこからオズボーン分画法によって溶解性に応じてタンパク質を分画した。粉砕の工程を経ることで効率よく分画を行うことが出来たが、元来米はタンパク質含有率が低いため、加工機能性を評価するのに十分な量のタンパク質を得るためには実験スケールをさらに大規模化する必要があることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は以下の2大課題により構成され、それぞれの研究を遂行するために複数の小課題を計画している。2022年度に予定した実験は以下の通りである。 (大課題1)イネの種子貯蔵タンパク質の遺伝解析:野生種およびコアコレクションの栽培、NGSリードのマッピングおよびバリアントコール、GWASに向けた多型情報の整備、タンパク質含量および関連形質のGWAS (大課題2)イネ種子貯蔵タンパク質の加工機能性の解明:オズボーン分画によるグルテリン、プロラミン、αグロブリンの大量分画法の確立 2022年度は予定していた実験をほぼ全て終えることができ、概ね計画通りに進行していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度の取り組みにより、1)野生イネおよびコアコレクションのゲノム多型情報を整備、2)野生種および在来種は近代的な栽培種よりタンパク質含量が高い傾向にあること、3)種子貯蔵タンパク質含量に関連する複数のQTLを同定、4)タンパク質含量と粒重は弱い負の相関関係があるが、タンパク質含量のQTLは粒重のQTLと重複しないこと、5)各タンパク質の分離・精製法を確立することができた。これらの結果は、1)なぜ野生種・在来種では栽培種より多くタンパク質を蓄積できるのか?2)野生種・在来種にはどういったタンパク質が蓄積しているのか?3)高タンパク質含量を支配している遺伝的要因は何なのか?4)どういったメカニズムでタンパク質含量を制御しているのか?5)米の貯蔵タンパク質を有効利用する加工方法は?などの新たな問いが生じた。そこで、2023年度は当初の予定を一部変更し、以下のような取り組みを行う。 (大課題1)イネの種子貯蔵タンパク質の遺伝解析:高タンパク質系統におけるデンプン含量の分析、野生イネ染色体断片置換系統をもちいたマッピング、SDS-PAGEによるタンパク質の分析、高タンパク質系統の交配 (大課題2)イネ種子貯蔵タンパク質の加工機能性の解明:ラマン顕微鏡を用いたタンパク質の局在調査、液状食品における加工機能性(乳化性、起泡性)
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