研究課題/領域番号 |
22H02325
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
三屋 史朗 名古屋大学, 生命農学研究科, 准教授 (70432250)
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研究分担者 |
土井 一行 名古屋大学, 生命農学研究科, 准教授 (80315134)
カルタヘーナ ジョイス 名古屋大学, 生命農学研究科, 准教授 (10519929)
杉浦 大輔 名古屋大学, 生命農学研究科, 講師 (50713913)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | イネ / 葉鞘 / 塩ストレス / 塩排除能 |
研究実績の概要 |
イネ葉鞘の塩排除能の分子機構と塩害下での生理的意義の解明を目的とし、CRISPRによるゲノム編集や過剰発現などの遺伝子改変技術を用いて、これまでに見出した塩輸送体遺伝子や転写因子の候補遺 伝子から実際に葉鞘の塩排除に関わる遺伝子を同定する。また、QTL解析を行い葉 鞘の塩排 除能の品種間差に関わる遺伝子座を同定し、遺伝的背景が同一でQTLのみ異なる残余自殖系統を作製して、葉鞘の塩排除能が塩害下のイネ生産性の維持にどのように寄与するかを調べることが目的である。 まずCRISPOR-Cas9によるノックアウト変異株作出用コンストラクトを作製した。その後アグロバクテリウムに形質転換し、イネカルスに感染させた。しかしその後再分化個体を得ることができなかった。また、HKT1;1, HKT2;1, NHX1, Jumonji遺伝子のTos17挿入株の表現型解析の結果では、現在までにNHX1ノックアウト株が葉鞘の塩排除能の減少する表現型を示している。その他はデータのばらつきが大きく、まだ葉鞘の塩排除能への変化の有無は結論付けられない。 次に、Chop-qPCR法を用いて塩応答する塩輸送体遺伝子群、および塩応答性転写因子遺伝子のプロモーター領域のDNAメチル化程度を調べた。現在までに調べたほとんどの遺伝子について、発現量の変化とDNAメチル化程度の変化に関係は見られなかった。 さらに、ノナボクラ/コシヒカリCSSLのうち、SL502, 536とコシヒカリのF2個体を用いたQTL解析では、栽培・収穫が終わった。SL509とコシヒカリのF2集団は作製した。またQTL集積を見越したSL502とSL509の交配を行い、F1種子を得た。さらに、残余自殖系統の作製のため、IR-44595と318を用いたF5系統より、QTL-seq解析用系統の作出に成功した。また、QTL集積系統の作出にも成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
特に葉鞘の塩排除関連候補遺伝子群の過剰発現株、ノックアウト変異株の作出に遅れが生じている。CRISPR-Cas9用コンストラクトを作製し、アグロバクテリウムに形質転換してイネカルスに感染させた。しかし現在までに再分化個体を得ていない。再分化個体が得られるにはカルス誘導からもう一度行う必要があり、予定より遅れている。さらに、Tos17挿入株の表現型解析においても、個体間のばらつきが大きく、十分に結論付けることができなかったため、表現型解析も再度行う必要がある。これらの理由から、予定よりもやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題は、当初申請した方策で進めていく。ただし現在遅れている理由についての方策として、まず葉鞘の塩排除関連候補遺伝子群の過剰発現株、ノックアウト変異株の作出の遅れについては、再分化誘導に用いる試薬、特に植物ホルモンをもう一度作り直し、再分化誘導を試みる。またCRISPR-Cas9コンストラクトを用いない野生型イネカルスをポジティブコントロールとして用い、作製した試薬の質をチェックする。 次に個体間のばらつきが大きく結論付けることのできなかった表現型解析については、扱う個体数を増やし、環境のばらつきも考慮した実験計画法(乱塊法)を用いて再度表現型解析を行う。
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