研究課題
昨年度の実験結果より、葉鞘の塩排除に関わると考えられる塩輸送体遺伝子のノックアウト変異株に塩輸送体遺伝子を導入した相補株の世代を進めた。特にAKT1遺伝子のノックアウト変異株にAKT1遺伝子をカリフラワーモザイクウィルス35Sプロモーターの下流につなげたコンストラクトを導入したところ、AKT1遺伝子のノックアウトで減少したカリウム排除能が増加した。このことはAKT1遺伝子が葉鞘のカリウム排除能に何らかの役割を担うことを示唆した。またCRISPR-Cas9法による遺伝子ノックアウトのため、葉鞘の塩排除能に関与すると考えられる3遺伝子についてコンストラクトを作製し、現在イネ(品種日本晴)のカルスにアグロバクテリウムを介して感染させた。MeDIP-qPCR法を適用し、対照区と塩処理区での各遺伝子のプロモーター領域のDNAメチル化程度を調べた。具体的にはRNA-sequencing法で見出された11遺伝子について、対照区と塩処理区から抽出したゲノムDNAを用いて、MeDIP-qPCR法によりDNAメチル化程度を調べたところ、RNA-sequencingの結果と一致する結果は見られなかった。したがって、葉鞘での転写レベルの塩応答は、DNAメチル化によって制御されないことが示された。IR-44595と318の交雑系統について今年度はさら にQTL-seq解析に用いるためのF6系統を作出した。また、ノナボクラ/コシヒカリCSSLのSL502およびSL509とコシヒカリの交雑集団を用いて、QT L解析を行った。その結果、まず親系統(コシヒカリと比較してSL502, 509)の間に葉鞘の塩排除能の違いが見られず、またQTLも検出されなかった。その原因として、前年度コシヒカリとSL502,509とを比較したときと異なる水耕容器や場所で行ったため、植物の生育環境が異なったことが原因と考えられた。
3: やや遅れている
CRISPR-Cas9による遺伝子ノックアウトについて、イネカルスへアグロバクテリウムを感染させた後、再分化個体が得られなかった。その理由は不明であるが、所有している植物ホルモンなど試薬の劣化が問題ではないことが明らかになり、現在供試するカルスの数を増やして検討している。またイネ葉鞘を用いたメタボローム解析を外注で行ったが、年度初めにサンプルを送付したものの、年度内に結果を得ることができず、進捗状況は想定よりやや遅れている。
CRISPR-Cas9法による葉鞘の塩排除に関すると予想される遺伝子のノックアウトが想定よりやや遅れていることについて、イネのCRISPR-Cas9によるノックアウトを行っている他の研究者よりアドバイスを受け、再分化培地のレシピを変更して引き続き行っていく。
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