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2022 年度 実績報告書

イネ高温登熟障害耐性における根系機能が果たす役割の解明

研究課題

研究課題/領域番号 22H02328
配分区分補助金
研究機関秋田県立大学

研究代表者

小川 敦史  秋田県立大学, 生物資源科学部, 教授 (30315600)

研究分担者 曽根 千晴  秋田県立大学, 生物資源科学部, 助教 (30710305)
松波 麻耶  岩手大学, 農学部, 助教 (40740270)
川上 寛子  秋田県立大学, 生物資源科学部, 助教 (70772359)
研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワードイネ高温登熟障害耐性 / 光合成速度 / 炭素分配 / 抗酸化活性 / メタボローム解析 / 根系
研究実績の概要

出穂期から登熟期にかけての光合成速度および蒸散速度の測定したところ、対照品種の「あきたこまち」では対照区と比べ高温区で登熟期の光合成速度や蒸散速度の低下がみられた.これらの結果から,「あきたこまち」は高温条件下では光合成速度や蒸散速度が維持できず,玄米外観品質が低下するのに対し,高温登熟障害耐性品種の「ふさおとめ」は光合成速度や蒸散速度が維持できるため,玄米外観品質の低下が抑制されているのではないかと考えられた.高温処理が出穂期以降の同化産物の転流へ与える影響を調査した.高温登熟障害耐性品種「笑みの絆」では処理区間で分配比の大きな違いは見られなかった.一方,「コシヒカリ」は高温処理によって根への分配が増加し,「あきたこまち」は根への分配が減少し,穂への分配が増加していた.
この時,抗酸化活性を示す指標の一つであるORAC値は両品種とも高温区において上昇し,「あきたこまち」の方が「ふさおとめ」よりも高い値を示し.SOD活性は,どちらの品種も処理区間で有意な差はみられなかったが,両処理において「ふさおとめ」の方が有意に高い活性を示した.スーパーオキシド産生速度は,どちらの品種も高温区で減少する傾向がみられ,「ふさおとめ」では有意に減少していた.
さらに出穂期の穂と根における高温処理による代謝物質の変化をメタボローム解析により網羅的に調査した.穂では,高温処理により「あきたこまち」ではTCAサイクル,グルタミン酸代謝を中心とした18物質が有意に増加し,「ふさおとめ」ではTCAサイクル糖代謝系を中心とした12物質が有意に増加した.一方で「あきたこまち」では7物質,「ふさおとめ」では9物質が有意に減少していた.根では,高温処理により「あきたこまち」では糖や核酸代謝系を中心とした5物質が有意に増加し,「ふさおとめ」ではTCAサイクル,グルタミン酸代謝を中心とした14物質が有意に増加した.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

令和4年度交付申請書に記載した2022年度研究実施計画である
a)生長ならびに高温登熟障害程度の評価
b)出穂期における炭素分配の変化の検討
c)メタボロミクスによる代謝物質の差異の網羅的解析
d)抗酸化活性の差異の検討
の4項目に取り組み,成果を得ることができた.この結果をもとに令和5年度以降の研究を進めてく準備も整っていることから,「おおむね順調に進展している」と判断した.

今後の研究の推進方策

令和4年度の研究成果をもとに,令和5年度には以下の4項目に取り組む.
a) 根系形態及び内部形態の差異の評価・・・イネ根系では,根系の大部分を占め養水分吸収のほとんどを担っていると考えられている側根には,高次根を発生させない細いS型側根と高次根を発生させる太い側根L型側根の2種類の異型根がある.本研究では,高温登熟障害耐性品種と感受性品種間で異形根の差異について評価する.さらに組織切片を作成し,内部形態の差異を評価する.
b) 養分吸収の差異の検討・・・「高温登熟障害耐性には,出穂期において養水分を地上部に十分供給することが重要である」という仮説を証明するために,出穂期おいて地上部の窒素,リン,カリウム,カルシウム,マグネシウム,鉄,亜鉛,モリブデン,銅含有量を測定し,高温登熟障害耐性と感受性品種間での養分吸収の差異を明らかにする.
c) トランスクリプトーム解析による発現遺伝子の差異の網羅的解析・・・高温登熟障害耐性と感受性品種間でのイネ根系と地上部における遺伝子発現にどのような差異が見られるかをトランスクリプトーム解析により網羅的に比較検討し,高温登熟障害耐性を示すために必要な遺伝子候補の探索を行う.この結果をもとに,高温登熟障害耐性を示すために必要な代謝物質の探索を行う.
d) 抗酸化活性の差異の検討・・・出穂期に根および地上部 (穂,葉身,根) を採取し,水溶性成分の抗酸化力をORAC法,により網羅的に評価する.さらに活性酸素解毒過程のグルタチオン-アスコルビン酸回路での代謝に関わる物質ならびに酵素活性を測定し,高温登熟障害耐性に対する関与を明らかにする.

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 産業財産権 (1件)

  • [雑誌論文] イネ高温登熟障害耐性品種の幼苗期における選抜方法の検討2023

    • 著者名/発表者名
      豊福恭子・北田一路・石川陽子・小川敦史
    • 雑誌名

      日本作物学会紀事

      巻: 受理済み ページ: 受理済み

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Estimating the Degree of the High-Temperature Damage in Rice Grain Ripening by Proximity Remote Sensing during the Heading Period2022

    • 著者名/発表者名
      YOSHINO Saki、TOYOFUKU Kyoko、SONE Chiharu、OGAWA Atsushi
    • 雑誌名

      Japanese Journal of Crop Science

      巻: 91 ページ: 215~222

    • DOI

      10.1626/jcs.91.215

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [産業財産権] 出穂期から穂揃期における収穫時のイネ高温登熟障害程度の非破壊推定方法2023

    • 発明者名
      小川敦史, 吉野早紀, 豊福恭子, 曽根千晴
    • 権利者名
      小川敦史, 吉野早紀, 豊福恭子, 曽根千晴
    • 産業財産権種類
      特許
    • 産業財産権番号
      特願2023-022344

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公開日: 2023-12-25  

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