研究課題
温帯以北の果樹等樹木は冬季、凍結温度に頻繁に曝される。水分豊富な冬芽、枝等の越冬器官がどのように致死的な細胞内凍結を回避するか(凍結戦略)、重要な耐寒性機構だが、その機構や多様性はよく判っていない。樹木の冬芽、枝など厚く複雑な器官内部の凍結状態把握は困難で、植物の凍結戦略研究の最大の障害だった。これを解決するため、まず、温度可変高分解能MRIを用いた凍結挙動の可視化法開発・最適化を進めた。豪州の高分解能MRIを用いた共同研究は、コロナ禍のため大学が長い間封鎖されていた影響などもあり、相手側の都合で当該年度の共同研究はできなかった。3D画像の効率的な解析法確立を行うため、ソフトウェアや解析法の探索を、世界中のソフトを調べ広範囲に行った。その結果、異なる温度で撮像した複数の3D画像セットを同時にシンクロしながら、任意スライス画像を自在に観ることができるソフトを見出すことができた。本解析手法は、器官内の全ての組織の凍結様式の詳細解析には不可欠な技術だ。現在、このソフトの立上げを行っている。筑波大・寺田研究室の自作の温度可変MRIを利用した解析装置や撮像法も改良を進めた。試料Probe内の温度勾配が生じにくい試料室の構造や感度が向上する磁場勾配装置などについて工夫した。また、実際の試料室内の冷却具合や温度分布を調べ、良好な結果を得た。高磁場MRIは、マシンタイム、操作マンタイムが限られることが多いため、有効利用のため同時に多数の試料を測定する方法も開発した。スライス厚を厚くし、マルチスライス法で撮像することで、高解像度で多数の試料を可視化できるようになった。この手法は凍結様式の多様性解析に向いている手法だ。本手法を用いて、実際の樹木器官の凍結様式の可視化解析を始めた。
3: やや遅れている
豪州では、コロナ禍中、全ての大学機関が封鎖されていたため、再開後もその影響が大きく、豪州MRIを利用した研究は遅れている。一方、3D撮像画像セットの解析法や筑波大MRI装置については、研究の大きな進展がみられた。
MRIによる凍結様式可視化は、本研究において最も重要な技術のため、この手法に重きを置いて研究を進めている。
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Plant Cell & Environment
巻: 45 ページ: 2109-2125
10.1111/pce.14255