研究課題/領域番号 |
22H02336
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
樋口 洋平 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 准教授 (00746844)
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研究分担者 |
久松 完 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 野菜花き研究部門, グループ長補佐 (00355710)
石森 元幸 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 助教 (50758729)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | キク / 高温開花遅延 / 光受容体 / 概日時計 / 温度受容体 |
研究実績の概要 |
地球温暖化に伴う作物生産に関わる諸問題を解決するため、高温耐性を備えた新品種の開発が喫緊の課題となっているが、植物の外気温応答機構は明らかになっていない。キクは日長調節による周年生産が世界的に普及しているが、夏季の高温開花遅延の克服が積年の課題となっている。最近、シロイヌナズナにおいて光受容体phyBと概日時計因子のEvening Complex(EC)が温度受容体として機能することが報告され、光周期の受容と温度の受容経路が大幅に重複する可能性が示された。本研究では、キクの高温開花遅延をターゲット形質としてphyBや概日時計構成因子ECの機能解明を通じて光周期と温度刺激の統合点を明らかにし、人為的な開花適温の改変を試みると同時に、作物の生育・開花適温の制御機構を理解することを目的とする。これまでに、温度受容に関与すると予想される概日時計因子のECを構成するELF3, ELF4, LUX等の過剰発現体およびCRISPR/Cas9による遺伝子破壊株の作出に取り組み、過剰発現体は各遺伝子について概ね複数ラインの作出に成功し、一部は極端な遅咲き形質や形態異常が確認されている。CRISPR系統については実験条件の最適化を同時進行中であるが、一部の遺伝子では標的遺伝子への変異導入が確認されている。また、栽培ギク品種における網羅的遺伝子発現解析の準備段階としてキクタニギクでの予備実験を概ね完了した。今後は得られた形質転換体の開花応答を詳細に解析し、さらには異なる温度条件下のRNA-seq解析結果を加えることで、概日時計遺伝子による温度受容メカニズムとその標的遺伝子ネットワークが明らかになるものと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
【課題1】キクタニギクのEC構成因子であるELF3, ELF4, LUX, およびECの直接ターゲット候補遺伝子であるGI, PRR7について過剰発現体 (OX)とCRISPR/Cas9による遺伝子破壊株の作出を行った。これまでにELF4-OX, LUX-OXの作出に成功し、予備的な開花試験の結果、極端な遅咲きと形態異常がみられた。 【課題2】高温耐性の異なる栽培ギク品種間での網羅的発現解析に先駆けて、キクタニギクにおいて異なる温度(20℃, 30℃)条件下での花成関連遺伝子の日周変動を3反復で解析した結果、花成遅延する高温条件下ではCsGI等の夕方に発現極大を示す遺伝子の発現が日没後も高いレベルを維持していた。またELF3のPrDを秋ギク品種(NIFS-3, 神馬)と夏秋ギク品種(精雲、ナガノクイン、ロアール)で比較した結果、高温耐性に寄与するような共通の変異はみられなかった。 【課題4】キクタニギクのプロトプラストへCas9と複数種類のgRNA発現ベクターを一過的に導入し、約24時間後にプロトプラストを回収し、標的遺伝子への変異導入を確認した。その結果、変異導入が確認できた標的配列はわずかであり、変異導入効率は極めて低いことがわかった。また、栽培ギクのプロトプラスト実験系を構築するため、試験的に神馬のプロトプラストを単離し遺伝子導入を試みた結果、遺伝子導入効率は15-34%であった。
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今後の研究の推進方策 |
全体として概ね順調に進んでおり、形質転換体の作出とCRISPR/Cas9による変異導入効率の改善に今後も重点的に取り組んでいく。【課題1】については、昨年度に引き続き、候補遺伝子の過剰発現体とCRISPR/Cas9遺伝子破壊株の作出に取り組み、既に作出済みの形質転換体については複数の光周期条件下および温度条件下における花成反応を詳細に解析する予定である。【課題2】については、日本国内の高温開花性栽培ギク品種にくわえ、オランダDeliflor社提供の高温開花性品種を複数供試し、RNA-seq解析に向けた栽培試験と発現解析を実施する。【課題3】については、既に作出済みのCsPHYB形質転換体を用い、高温条件下での開花遅延形質を野生型と比較する。【課題4】については、プロトプラストを用いたcleavage assay系を構築するため、ベクター導入後に長期間 (48h~)培養できるプロトプラストの調整方法を検討する。具体的には、プロトプラストの生存率を改善するため、無菌ではなく通常の鉢植えで栽培したキクの葉を使用することを検討する。加えて、遺伝子導入後のプロトプラストの無菌培養と再分化条件の検討に取り組む。
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