研究課題/領域番号 |
22H02344
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
清水 将文 岐阜大学, 応用生物科学部, 教授 (60378320)
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研究分担者 |
市橋 泰範 国立研究開発法人理化学研究所, バイオリソース研究センター, チームリーダー (20723810)
柳瀬 笑子 岐阜大学, 応用生物科学部, 教授 (60313912)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | γ-グルタミル-S-アリルシステイン / γ-グルタミルシステイン / グルタチオン / フザリウム萎凋病 / 発病抑止性 / 微生物叢 / 拮抗細菌 |
研究実績の概要 |
γ-グルタミル-S-アリルシステイン(GSAC)の土壌施用で誘導される拮抗細菌集積を介したフザリウム萎凋病抑止性のメカニズムを明らかにするため、GSACと構造が類似のペプチドであるγ-グルタミルシステイン(GGC:システインとグルタミン酸で構成)およびグルタチオン(GSH:システイン、グルタミン酸、グリシンで構成)を土壌に施用し、GSAC施用と同様の効果が得られるかを検証した。その結果、GSAC区ではキュウリつる割病(フザリウム萎凋病の一種)の発病が顕著に抑制されたのに対して、GGC区とGSH区では抑制されなかった。さらに、土壌微生物カクテルとGSAC、GGCまたはGSHを添加した液体培地にキュウリつる割病菌を接種し、同病原菌の増殖を比較した結果、GSAC区でのみ増殖が抑制された。これらのことから、拮抗細菌集積を介した発病抑止性の誘導効果は、S-アリルシステイン(SAC)とグルタミン酸(Glu)から成るGSAC特有のものであることが明らかとなった。つぎに、対照土壌および各ペプチド施用土壌から蛍光性シュードモナス菌(FP菌)を分離したところ、GSAC施用土壌からのみ同菌が高頻度で分離された。この結果は、GSAC施用による発病抑制効果には、既報のとおり、FP菌が関与することを示唆している。一方で、前年度までの研究において、GSACと同様に発病抑止性を誘導できることが明らかとなったSACとGluの混合液を施用した土壌からは、FP菌がほとんど分離できなかった。このことから、GSAC施用とSAC・Glu施用は異なるメカニズムで発病抑止性を誘導しており、GSACが分解されて生成されるアミノ酸(SACとGlu)ではなく、GSAC自身が拮抗性FP菌の集積を誘導する原因であると推察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
年度当初の計画とは研究の進め方が違ってはいるが、拮抗細菌集積の原因がGSAC自身であることを明らかにできた点や、蛍光性シュードモナス(FP菌)が発病抑制の原因であることが改めて確認がきたことから、当初の目的達成に大きく近づいたと考えている。一方で、FP菌のゲノム解析や細菌叢解析などに着手できなかった点は、当初計画より遅れている。以上のことを総合して、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
拮抗細菌(FP菌)集積はGSACそのものにより誘導される可能性が浮上したため、FP菌のGSACに対する応答性を詳細に解析する必要が出てきた。2024年度は、この点を中心に解析を進めたい。また、細菌叢解析やGSACの土壌中での動態解析など未着手の実験も実施し、研究目標を達成したい。
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