研究実績の概要 |
本研究では、半世紀以上前にインドシナ諸国で収集され、種子が国立遺伝学研究所で保存されていたイネ在来品種を研究対象とする。そして、当時インドシナ諸国の伝統的稲作を支えていた在来品種の実態を明らかにするとともに、原産国での遺伝資源としての復活を目指している。 本年度は、国立遺伝学研究所から分譲可能であった277系統の種子増殖を試みた。うち、231系統については自然状態での出穂期に関する予備調査を日本南端の石垣島で行った。また、インドシナ諸国(カンボジア、ベトナム、ラオス、タイ)を広くカバーする主要162系統については、葉よりDNAを抽出するとともに7つ種子形質(種子長、種子幅、種子厚、玄米長、玄米幅、玄米厚、100粒重)の調査を行った。さらに、籾殻の色、果皮の色および糯性についても調査した。種子形質に関しては14遺伝子座(GW2, GS2, qLGY3, GS3, GL3.1, TGW3, GS5, GW5, GS6, TGW6, GW6a, GLW7, GL7, GW8)でこれまで報告されている19種類の自然突然変異(insertion/deletion, SNP)の有無を特異的マーカーを用いてサーベイした。籾殻の色、果皮の色および糯性については、それぞれの主要遺伝子座(Bh4, Rc, Waxy)における機能喪失突然変異の有無を特異的マーカーによりサーベイした。これらのデータを比較することにより、種子形質と原因遺伝子の関係について解析した。 パスポートデータに関しては、主要162系統については精査し公表した。残りの系統については手元にある種子袋や報告書等の資料をもとに、全系統の検証を進めている。
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