研究課題/領域番号 |
22H02373
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
原科 幸爾 岩手大学, 大学院連合農学研究科, 教授 (40396411)
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研究分担者 |
松本 一穂 琉球大学, 農学部, 准教授 (20528707)
斎藤 仁志 岩手大学, 農学部, 准教授 (60637130)
高田 乃倫予 岩手大学, 農学部, 助教 (40905668)
高野 涼 弘前大学, 農学生命科学部, 助教 (80913607)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 木質バイオマス / 森林管理 / 多面的価値 / 生態系サービス / 管理主体 |
研究実績の概要 |
研究対象地において,バイオマス利用による多面的価値の評価と可視化および森林管理主体に関する調査研究を実施した。バイオマス利用にかかる防災力と水源涵養力の向上については,熊本県阿蘇山の外輪山稜線上にあるヒノキ人工林と隣接するススキ草原において土壌の透水性・保水性を調査した。その結果,ヒノキ人工林ではススキ草原に比べて土壌の飽和透水係数が約4.4倍高く,土壌の毛管粗孔隙率が1.4倍多いことが分かった。このほか人工林の間伐や草地への造林が土壌の防災・水源涵養機能に及ぼす影響を時系列的に評価するために,間伐直前のスギ・ヒノキ人工林および元牧草地のスギ造林地に調査区を設定し,土壌物理性の調査や植生調査を実施した。また,森林利用による文化的サービスの向上に関しては,バイオマス利用と福祉との連携を念頭におき,まずは農副連携については文献調査を進めた。 バイオマス利用の戦略マップに関しては,とくに森林の基盤データ整備が充実しているため新たに対象地として設定した岐阜県全域を対象として,災害リスクと林業生産の難易度を指標としたゾーニングを行い,行森林内路網の災害リスクと普及費用の関係性を分析した。 森林管理主体の検討に関しては,非林業専従者によるバイオマス材供給の可能性を探るために岩手県紫波町を活動場所とする5つの団体について聞き取り調査と参与観察を行った。これらの団体は地元の森林所有者を中心とした地縁的グループと紫波町内外から広く参加者が集まる目的志向グループの2つに大別され,いずれも様々な支援事業を活用して活動していたが,一部で支援策が十分に活用されずバイオマス利用につながっていないことが分かった。また,これを解消するために,団体間の仲介役やコーディネータ的な役割を果たす個人および団体が大きく貢献していることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
木質バイオマス利用による多面的価値の評価に関してはとくに森林管理を通じた森林の防災力および水源涵養力に関する基礎的データが着実に蓄積できており,さらにサンプル数を増やして再現性を担保することで,対象地全体にわたって面的に評価結果を広げ,木質バイオマス利用の有無による生態系サービスの違いの可視化につながることが期待される。 木質バイオマス利用の戦略マップに関しては,その基礎情報として,災害リスクと林業生産の難易度を指標としたゾーニングが実施できた。これは基盤データが充実している岐阜県を新たな対象地としたことが功を奏したものと考えており,この成果を他地域にも適用することが期待される。 森林の管理主体についても,聞き取り調査と参与観察によって,その実態をかなり詳細に把握することができた。これらの情報はバイオマス材供給のための戦略構築や政策提言につながるものと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
バイオマス利用にかかる防災力と水源涵養力の向上については,今後継続して現地調査を行い,人工林の間伐や草地への造林が土壌の防災・水源涵養機能に及ぼす影響を時系列的に評価する予定である。さらにサンプル数を増やして対象地全体にわたって評価結果を面的に広げることを目指す。バイオマス利用の文化的サービスについては,木質バイオマス発電所や製材所,苗木業者への聞き取り調査や現地踏査を行い,木質バイオマスに関わる中での農福連携および林福連携の現状および課題について明らかにする。また,木質バイオマス利用を通じた地域づくりについては,新たに青森県西目屋村を対象地域として加え,周辺市町村との連携の可能性について検討し,木質バイオマス利用がもたらす地域への波及効果についても明らかにする。 木質バイオマス利用の戦略マップに関しては,2022年度に実施したゾーニング手法を他地域に適用するためのデータの整備検証を行う。また,地域における林業労働力と整備可能な森林の面積変化を空間・時間的なマッピングを目指す。 森林の管理主体については,引き続き聞き取り調査と参与観察を実施する。とくに,岩手県紫波町の団体のうち,特定の活動場所を持たない目的志向グループの一つが,2023年度から森林山村多面的機能発揮対策交付金を活用して,特定の地区を対象とした里山会を結成し,地縁的グループの側面も持つようになったことから,森林管理主体の時系列的な進化についても注目しながら,木質バイオマス利用の時間的戦略の構築に資する知見を得ることを目指す。
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