研究課題/領域番号 |
22H02388
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 大阪公立大学 |
研究代表者 |
伊東 明 大阪公立大学, 大学院理学研究科, 教授 (40274344)
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研究分担者 |
上谷 浩一 愛媛大学, 農学研究科, 准教授 (80638792)
名波 哲 大阪公立大学, 大学院理学研究科, 准教授 (70326247)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 熱帯雨林 / 浸透交雑 / MIGseq / ddRADseq / ボルネオ島 |
研究実績の概要 |
2022年度は、以下の内容を実施した。 1) サラワク州に生育する種全体の系統関係と過去の交雑の推定:Santubong国立公園の低地フタバガキ林とケランガス林の移行帯に生育する100科543種から柵葉標本とDNA用の葉サンプルを採取した。特にケランガス林に特異的に生育するフタバガキ科2種とアカネ科数種(未同定)については複数個体からDNA用サンプルを採取した。また、予備解析に用いたLambir 国立公園のフトモモ科Syzigium属のddRADseqデータを使って、より詳細な交雑解析を進めた。特にstacksによるSNPs抽出方法の最適化と交雑解析ソフトDsuiteによるPatterson's Dとf4-ratioを用いた交雑解析を行い、交雑解析方法の確立を進めた。 2) 同所的に見られる複数の個体群の個体間での最近の交雑の推定:Santubong国立公園とLambir国立公園の2か所に生育するフタバガキ科2種とアカネ科Ixora属の各種2~13個体から柵葉標本とDNA用の葉サンプルを採取した。Lambir国立公園のIxora属5種について、DNAを抽出し、葉緑体DNA3領域(rbcL、matK、trnH-psbA)とMIGseqで得た塩基配列から系統解析と交雑解析を行い、種間交雑を支持する結果が得られた。また、既存のIxora属のSSRマーカ24セットについて予備実験を行い、調査地の種に有効な8セットのSSRマーカを選んだ。さらに、Lambir国立公園に生育するウツボカズラ科Nepenthes属4種と雑種と思われる個体についてMIGseqデータを用いた交雑解析を行い、F1と推定される雑種個体を確認した。 3) 天然林と二次林での最近の種間交雑頻度の比較:サラワク州の二次林に設置された調査区の種組成データを入手し、天然林と二次林の両方に生育している種をリストアップした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定していたSantubong国立公園での調査を実施し、これまで得られていなかった種のDNA用サンプルが採取できた。また、これまでは予備的な解析にとどまっていたゲノムワイドなDNA配列データからの交雑解析について、より詳細な解析手法を試すことができ、交雑解析の具体的な手法をほぼ確立することができた。Nepenthes属では、MIGseqで得られた配列データから最近の交雑(F1雑種個体)を推定することができたことから、SSRマーカーとMIGseqデータを併用することで、最近の交雑についても推定可能であることが検証できた。二次林の調査はまだ開始できていないが、初年度は種リスト作成のみを予定していたため、概ね予定通りに進んでいると言える。
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今後の研究の推進方策 |
1) サラワク州に生育する種全体の系統関係と過去の交雑の推定 立地環境の異なる国立公園での調査を進め、対象の分類群についてより多くの種のサンプルを収集する。また、本年度に確立した交雑解析方法を他の分類群(フタバガキ科、カキノキ科、アカネ科)の既存データにも適用し、詳細な交雑解析を試みる。新しいサンプルが集まった時点で、様々なハビタットの種を含むサラワク州全体の系統解析と交雑解析を行う。 2) 同所的に見られる複数の個体群の個体間での最近の交雑の推定 SSRマーカーとMIGseqデータを併用してIxora属の交雑解析を行い、最近の交雑個体の有無を確かめる。また、その他の分類群についても複数個体からのサンプル採取を進め、サンプルが揃ったものから、交雑解析を行う。 3) 天然林と二次林での最近の種間交雑頻度の比較 本年度に作成した種リストに基づいて、二次林でのDNA用サンプル採取を行う。サンプルが揃った分類群から、上記と同じ方法で交雑解析を行い、天然林の結果と比較する。
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