研究実績の概要 |
ユーカリは、強酸性土壌で問題となるアルミニウム過剰害に極めて高い耐性を持つ。我々は、加水分解性タンニンが根の中でアルミニウムを無毒化するという新しいアルミニウム耐性機構をユーカリで発見している。この耐性機構を理解し応用するには、タンニンの生合成遺伝子が同定されている必要がある。本研究では、タンニン生合成の第3~第6段階の反応を触媒する酵素の遺伝子をユーカリで同定することを目的して、(1)候補遺伝子がコードするタンパク質をベンサミアナタバコや酵母で生産させ、試験管内で酵素反応の証明と酵素特性の解明を行い、(2)候補遺伝子を破壊したゲノム編集ユーカリを作製し、植物体内で酵素機能の証明を行う。 タンニン生合成の第3段階から第6段階の反応の基質となる4種類のタンニンのうち、市販されているのは第3段階のβ-glucogallinのみである。そこで、残りの1,6-digalloylglucoseと1,2,6-trigalloylglucose、1,2,3,6-tetragalloylglucoseを植物体からカラムクロマトグラフィーで単離することで準備した。これらの基質は次年度以降、試験管内での酵素反応試験で用いる。 ユーカリで通常の遺伝子組換え体を作成するには1年以上の時間がかかるため、より迅速に遺伝子組換え体を得られる毛状根を利用した遺伝子組換え法の構築を目指した。毛状根菌(Rhizobium rhizogenes)の国内株7株と外国株1株を入手した。それらの菌株をユーカリの実生苗の胚軸へ接種する試験を行ったところ、すべての菌株で不定根の分化が認められた。今後、不定根に毛状根菌の遺伝子が導入されているか調べることで、毛状根の形成を確認する。
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