研究課題/領域番号 |
22H02395
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 国立研究開発法人森林研究・整備機構 |
研究代表者 |
平井 敬三 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (80370287)
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研究分担者 |
齋藤 智之 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (00414483)
梅村 光俊 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (00737893)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | タイ王国 / ケイ酸集積 / 一斉開花現象 |
研究実績の概要 |
タケ類の山火事耐性機能、更新初期成長と耐性機能とのトレードオフ関係解明のため、山火事頻度と到達度調査とタケのケイ酸分析の予備実験を行い、近年10年間は山火事が高頻度にあること、タケ部位によって実験条件を変える必要があることが明らかになり、タケ類の山火事耐性機能とそのトレードオフ関係解明に向けた知見が得られた。 タケ類の更新初期成長と山火事耐性形質とのトレードオフ関係解明のため、山火事頻度と火事ごとの延焼範囲をカウンターパートへの聞き取り調査から特定した結果、最近の約10年間は毎年尾根部に延焼しており、種組成が変化する可能性が予測された。試験地内の山火事調査は、現地調査員の聞き取り調査から予想以上の山火事到来頻度であることが分かってきた。これにより耐火特性の低いタケ種・樹種から山火事により種の焼失が起こり、近い将来試験地内のタケや樹種の組成が変化すると考えられる。 山火事耐性機能の種間差と特徴形質およびその獲得機構の解明のため、タケのケイ酸集積と耐火形質との関係性の予備実験に着手した。タイでのタケのケイ酸分析の実施に向けて、国内のモウソウチクのリター葉と稈を用いて、簡易な乾式灰化法または炭酸ナトリウム抽出法を検討した。乾式灰化法では、先行研究で提案されてきた様々な燃焼温度と時間を検討した結果、リター葉の灰分はほぼ白色で炭化物の生成は見られなかったが、稈の灰分はリター葉に比べ茶色みがかり、不完全燃焼または何らかの含有成分が影響したものと考えられた。また、高温下ではわずかにるつぼへのシリカの固着が認められたため、燃焼温度がシリカの収率に影響を与えることが示唆された。 現地調査において地形に応じた土壌特性とタケ類の分布との関係性を明らかにするため、斜面上・中・下の3つの固定プロットにおいて、10 cm、30 cm、60 cmの深さに土壌水分ポテンシャルセンサーを設置し、防火措置を整えて観測を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウイルス感染症に関連するタイへの渡航規制が緩和され、現地調査が実現した。これにより、メクロン長期動態観測試験地における地形に応じた山火事頻度と強度について、詳細な聞き取りが可能となり、過去の観測に基づく基盤的データを取得することができた。 また、土壌水分ポテンシャルセンサーを設置するとともに、ケイ素分析のための稈齢や葉齢を考慮したタケの選定基準を決定するなど、タケの分布と山火事耐性機能の解明に向けた現地観測を開始することができた。以上のことから、本課題の目的達成に向けて着実に進捗していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
タケ種の繁殖のタイミングと更新機構を解明するため、メクロン長期動態観測試験地を、地形に応じた山火事頻度によって、高頻度:尾根、中頻度:斜面中腹、低頻度:谷部とカテゴリー分けし、それぞれの場所で、タケ類4種の更新初期成長や山火事耐性形質およびその獲得機構、地形特有の土壌水分特性などを調べていく。また、山火事頻度カテゴリーに応じた、植物の焼失状況を調査・解析する。 山火事耐性機能の種間差と特徴形質およびその獲得機構を解明するため、日本国内のモウソウチクを用いて、タケのケイ酸集積と耐火形質との関係性を明らかにするためのケイ素分析手法を確立する。現地に設置した土壌水分ポテンシャルセンサーのデータを回収し、土壌水分ポテンシャルの季節変化と斜面ごとの特徴をとらえる。
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