研究課題/領域番号 |
22H02398
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 国立研究開発法人森林研究・整備機構 |
研究代表者 |
松浦 陽次郎 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 研究専門員 (20353857)
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研究分担者 |
安江 恒 信州大学, 学術研究院農学系, 准教授 (00324236)
小田 あゆみ 信州大学, 学術研究院農学系, 助手 (40571609)
梶本 卓也 新潟大学, 佐渡自然共生科学センター, 教授 (70353638)
大橋 伸太 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (70754315)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 永久凍土 / 森林火災 / 凍土面沈下と再上昇 / 更新稚樹 / 年輪 / 炭素蓄積 |
研究実績の概要 |
永久凍土上に成立する森林では、森林火災直後に永久凍土面の沈下が起こり、さらに火災後20年から30年を経過すると、凍土面の再上昇が始まる。生態系の炭素蓄積に凍土面深度の再上昇がどのように影響するかを評価するために、中央シベリアの永久凍土の連続分布域の1994年火災跡地と、アラスカ内陸部の永久凍土不連続分布域の2004年火災跡地における、凍土面深度推定と年輪解析による環境応答履歴の解明を計画した。 ロシアとウクライナの戦争開始により、ロシア国内の現地調査が実施不可能となったため、調査対象地の一つをカナダ北西準州の大規模森林火災跡地に変更し、2012年と2015年の火災跡地の現存量回復を測定した。アラスカ内陸部の調査では、2004年火災跡地の凍土面深度測定と、更新した稚樹(Picea mariana, Betula neoalaskana, Populus tremuloides)の根株の発根時期、年輪の解析を行った。 カナダ北西準州の火災跡地のジャックパイン林の現存量回復は、火災後7年では1平方mあたり0.2から0.6kg、火災後10年では1平方mあたり0.1から1.4kgであった。 アラスカ内陸部の森林火災の激甚焼失区域(地上部は全て焼失し林床には炭だけが残存)では、非焼失林分の凍土面が30cmであるのに対し、火災翌年の2005年には160cmに沈下していた。火災後18年を経過した同じ区域では、3地点の平均が150cmで、2m以深の測点もあった。凍土面の再上昇は明瞭ではなかった。 更新稚樹の発根状況には樹種特性が見られた。発根深度が最も深いのはカンバで、最も浅いのがトウヒだった。ポプラはおおよそ一定の深さで発根していた。年輪幅の増加には年ごとのバラツキが大きかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
年輪解析に必要な植物体試料については、アラスカからの持ち出しと日本への持ち込み手続きは問題なく完了した。センサスデータのとりまとめと、引き続き年輪解析、安定同位体比の測定が進行中である。 ロシア・中央シベリアの現地調査は、残る研究期間中も断念せざるを得ないが、カウンタパートであるスカチェフ森林研究所の研究者と、永久凍土地帯と非凍土地帯の森林における二酸化炭素フラックス収支のとりまとめを行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
共同研究カウンタパートである、アラスカ大学フェアバンクス校・国際北極圏研究センターとアラスカ森林火災コンソーシアムの研究者による、過去の地温測定データとモデル解析によって、近年のアラスカ内陸部の温暖傾向が火災跡地の凍土面再上昇を妨げている可能性が予測されている。今後は、我々の炭素蓄積パターンのデータと統合した、森林火災後の永久凍土融解と炭素蓄積機能の評価手法への展開が期待される。
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